【公益財団法人 勤労青少年躍進会 理事長賞】

世界の誰かのスポットライトに
埼玉県  森高雪菜

日本人として生まれたことの意味をずっと考え続けてきた。「日本人として、日本に生まれたことは宝くじに当たったも同然だよ。」世界中で言われたこの言葉がいつも、私の胸に突き刺さった。様々な国や地域で暮らし、学んだ後、人生をかけてやり遂げたいことが決まった。発展途上国のインフラ発展に貢献することだ。今、私はそのスタートラインにいる。


世界の不条理を“自分ごと”として考え、声なき人々に寄り添える社会を実現したい。「国創り」という仕事を通じて途上国の人々の日常に感動を生み出し続けていきたいのだ。「日本の支援には心から感謝している」という人々の言葉が忘れられない。インドネシアでは、工事中の地下鉄を前に大喜びする人々を、カンボジアでは、日本の橋によって、人生が変わったと言う人々に、ラオスでは日本の協力で建てられた学校で学ぶ沢山の児童に出会った。「支援する者」「支援される者」に分類される国際支援ではなく、相手国と共に国を創り上げ、日常の中の小さな感動を生み出し続けていきたいのだ。「かわいそうな人々」という偏見なフィルターで人々を見るのではなく、その地の人々の「心」に触れ、声に耳を傾け、人々と同じものを食べ、その国の言語を学び、信頼を得て働きたいのだ。歴史に名を遺す、大きなプロジェクトを成し遂げたい訳ではない、誰か1人にとっての、スポットライトになりたいのだ。


働くうえで大切にしていきたいことがある。第一に、「相手が大切にしていることを、大切にすることである。全て理解し、無理に尊重する必要はない。文字通り相手の大切にしているものを大切にするのだ。国際理解・異文化理解の場のみならず、他社理解とは、相手の気持ちにどれほど「共感」できるかが大切になってくるのではないか。相手の考えや感情、文化をすべて理解するのは難しいが、その気持ちにどれほど寄り添えるか、受け入れることが出来なくても、否定せず、理解しようとする姿勢、大切にする姿勢が重要だと思う。この視点を忘れずに、多様な価値観を持つ人々と目標達成に向けて共に働きたい。ありのままの人々の生活や文化を心から愛すことが出来る人でありたい。


第二に、「仕事に対する多様な価値観」を尊重していきたい。自分だけの物差しで物事を判断せず、多様な価値観を認めていきたい。私には世界で見た原体験がある。これが私が働く理由であり、原動力である。しかし、働く理由、目的は何でも良いのだ。成し遂げたい何か、やりたいことの実現のために働くことは素敵だ。だが、「将来の夢は?」「やりたいことは?」−幼少期から事あるごとに聞かれるこの質問に、立派な答えは必要ない。お金が欲しいから、特段やりたいことが無いから、借金を返すため、なんとなく等、様々な理由があって良い。私にとって簡単に出来ることが、相手にとっては非常に難しいことがある、私ができないこと、時間がかかることが目の前の誰かにとってはとても簡単で、常識である場合がある。どんな価値観を持った人々に対しても、安直な手段で屈服させる「怒り」を出し入れ可能な道具として使うことなく、丁寧な言葉で論理的に説明する手順を大切にして、信頼関係を築き、共に働きたい。年齢やバックグランドに関係なく、働く人、挑戦する人を温かく応援する人でありたいのだ。


私にとって「働く」とは小さな感動の連鎖、つまり誰かにとっての小さな光をつくることだ。この光は次々に連鎖し、可能性を秘めた未来へと繋がると信じている。世界の誰かのスポットライトになるために、私は今日も世界の不条理に立ち向かう。

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