【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事を通じて、かなえたい夢】
夢がないわたしはずっとひとりだった。
東北芸術工科大学 デザイン工学部 企画構想学科  鈴 木  唯  20歳

私には確かな「夢」がない。


小さい時はなんとなく好きなものを夢にすることができたが、年齢が上がるにつれてそれも難しくなっていく。自分の「できること」、「できないこと」がはっきりと見えるようになるからだ。そして、厄介なのは「できないこと」だ。人の記憶は、楽しい事よりも悲しい事の方が長く記憶に残る。つまり、「できない」というネガティブな記憶が色濃く残ってしまうと、たとえ将来海外留学をしたいと思っても「でも、英語ができない」とストップがかかり、自分の夢に自信が持てなくなってしまう。私もそうだった。

一番の要因となったのは、中学校で過ごした3年間だろう。


中学で私は女子ソフトボール部に入部した。1週間のうち休みは1日もなく、週末は早朝から日が暮れるまで練習をした。でも試合でベンチ入りさえ叶わない私は、ホームランを打つ同級生をネット越しに見ていた。毎日の練習はつらくて、でも試合には出れなくて、レギュラー入りしている同級生からは見下され、顧問からは早く荷物を運べと怒鳴られる。


そんな毎日で、「私はなにもできない」という想いが日に日に強くなっていた。別にソフトボールだけが私の人生でないことはわかっていたが、辞めた先の未来が想像できない。「夢」がなかったからだ。どうして私は得意でもないスポーツの練習を毎日しているのか?目的がないまま三年が経った。


だが、「できない」という気持ちばかりが先行して夢を探せなかった私が変わるきっかけは高校にあった。私は芸術系の高校に進学し、映像制作を専門に勉強し始めた。二年生でビデオ表現の専攻を選び、企画立案、撮影、脚本、編集。すべての過程を自分で行う。その中で私の「できること」が段々と見えてきたと同時に、私にできない事ができる同級生の存在に気づいた。編集がうまくできなければ、使い方に詳しい向かいの彼に教えてもらいながら一緒に作ればいい。書いた脚本に違和感があれば、構成のうまい隣の彼女に見てもらってアドバイスをもらえばいい。今の自分にないことを補填するのは、なにも自分じゃなくていい。それを知ってからはなにかが抜け落ちて、軽くなった。


大学生になった今は、やってみたい仕事がたくさんある。あの時の仲間のおかげで、「できないこと」じゃなく、「できること」を見つけることができたからだ。今、日々切磋琢磨している大学の仲間も、お互いの不足を補いながら目標に進むことができる、良き戦友と言える。


夢を見つけるためには、自分だけの力じゃ足りない。支え合い、競い合う仲間がいるから夢を見つけることができるし、目指す道が見えてくる。夢は個人のものだけれど、ひとりで探す必要はないんじゃないか。

私にはまだ確かな夢がない。だから、夢を確かにするために大事な仲間を得ることが、これから社会に出て働くことで、叶えたい夢だ。

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