【 佳   作 】

【テーマ:仕事を通じて、かなえたい夢】
私が実現したい働く環境
学習院女子高等科  熊 谷 南 那  17歳

「将来どんな仕事に就きたいの?」

高校三年生になった今、このような質問がぽつぽつとクラスメートや友人との間で出てくるようになった。しかしそう聞かれて、「私はこの職に就きたいの」と自信満々に具体的な仕事を挙げる人は少ない。セーラー服を着て毎日電車に揺られながら登校する私たちにとって、あと四年後には、同じ電車に乗るスーツを着た若い女性の方たちのように自分も出勤しているという実感がまだわかないのである。私もまだ特定の職はもちろん定まっていない。しかし私はどのような職についていようと、必ず仕事を通じて実現したい夢がある。それは誰もが自分の背景を気にせず働ける環境を実現していくことだ。

私たち高校生は、幸せに働くには高学歴が必須であると考えてしまいがちだ。この大学に入れればもう将来は安定する、と今までで育ってきた環境で自然と信じ込んでしまうようになり、よりレベルの高い大学に入ることが目標となってしまう。さらにはその後職場では自分がいかに儲かることができるか心配になる。もちろん安定した収入があってこそ、生活も豊かになり心にも余裕が出る。しかし私はこの高学歴が絶対に必要だという概念に執着しすぎると、私たちが将来職場で出会った人を判断する基準がその人の経歴になってしまうと思う。その人が高卒だから、といった理由でその人に価値がないと社会からみなされるのは不公平だと思う。学歴はその人を表す要素のほんの一部分であり、私は人間の価値をその人が何を成し遂げてきたかということだけで判断するのは間違っていると感じる。その人自体が持っている人格や特徴も私たちはお互い尊重するべきだと思う。

ではどうしたら働く際にその人が生い立ちだけで判断されないような環境を実現できるのか。私は、一人の呼びかけよりも皆の意識と行動によって徐々に実現されるのではないかと思う。高校でも私たちは価値観が似ている人とグループを形成しがちになってしまうが、ほんの少しの勇気を出して全く関わりのなかった人と話してみるとその人に対するイメージががらりと変わる。仕事をする際も同じなのではないか、と私は思う。自分とはかなり違う背景を持った人と接してみると、その人と似た背景を持つ人々全体に対する自分の偏見が消えるかもしれない。また社会で立場が優位な人の多くは、自分が恵まれた環境に生まれたからこそ高学歴を得たかもしれない。自分の力のみでは世間評価の良い経歴を得ることができなかったことを忘れてはいけない。自分とは異なる経験をしてきた人を見下さないように意識して、公平に職場で人と接することを心がけていきたい。私たちがこれから仕事を始めて職場の人と接する際、態度を相手の経歴で変えることがないように意識していけば、より多くの人が自分の経歴を気にしすぎず自信をもって生きていけるのではないかと思う。

働くということは社会で自分の役目を見つけることだと思う。仕事を持つことによって自分の居場所が見つかるからこそ、私たちは働きたいと思うに違いない。しかし高校三年生になって初めて働くことと日本の社会について深く考えてみると、多くの人にとっては自分の力を発揮して社会の居場所を見つけるのが自分の経歴のせいで困難になってしまっているのではないかと思う。生い立ちや学歴でその人の可能性が制限されない、より自由な働く環境を皆と実現するのが私の夢だ。

戻る