【 奨 励 賞 】

【テーマ:現場からのチャレンジと提言】
負の感情が勝り始めたと感じた時に
大阪府  ある  頁 生ぺじお  57歳

職域職種を問わず、仕事の現場は例えるなら、小さな胸一杯の理不尽に精一杯涙を堪えた、子供時代のそれぞれの一場面の連続だと言えるでしょう。

たとえば手足を縛られた状態でリングに無理矢理上げられた格闘家のような、理不尽極まりないピンチを、誰もが1度や2度は体験しているのが、実社会という現場です。

学生としての評価と成果を示す指標は「成績」であり、得点や偏差値をより多く高くすべく、一個人の努力が数値で繁栄される環境です。

今は懐かしい「虎の巻」「アンチョコ」と称された学習資料や、学習塾、家庭教師、通信教育など、一個人としての自身に合致した学習環境の構築が可能な選択肢が揃っていました。

ですが言うまでもなく、職場は違います。


新人は上司や先輩や同僚を選ぶことは叶わず、新学期のクラス編成の度に自然発生した、気の合う仲間同士のグループ構成も、現場で認められることは基本ありません。

上司や先輩によって指導内容が違ったり、指示通りに行動すれば別の人物から注意や叱責が届く場面は、すべての社会人が避けて通れないのが現実です。

さらには取引先や顧客からの、理不尽としか捉えられない要求やクレームと、それらに対して誰も手を差し伸べてくれない窮地もまた、現場に於ける洗礼と表現されています。

こうしたストレスが負の感情として蓄積すれば、たとえば貴重な自由時間の昼休みに、上司から食べたくもない予算オーバーの外食に誘われる展開も、大きな苦痛に他なりません。

頑なに同席に拘る上司に従わざるを得ず、ランチ難民を回避すべく、腕時計を気にしつつ飲食店の外に列を作る窮屈な姿は、ビジネス街のあちこちに溢れているのが現実です。


ですがそこが仕事の現場である以上、これらを踏まえた上で、自身の心を上手にコントロールする術が望まれます。

すべての方々にプラスの効果を約束できるものではありませんが、次の提言を意識していただければ幸いです。


ノウハウ本やネット配信など、不特定多数に向けて発信されているアドバイスを、鵜呑みにして頼り過ぎないこと。


これはこの国の教育システムが大きく影響していると思われますが、私たちは無意識のうちに

「ベストセラーの書籍にそう書いてあったから」

「みんながそうだと声を合わせているから」

文章で記されている、あるいは見知らぬもしくは不特定多数の第三者の発言に右へ倣えすることで、自己判断が誤った際の責任転嫁を試みる傾向が否めません。

ですがそれぞれの仕事現場の現状は、人間関係を含めて当然すべて異なっている以上、共通の正解を端的に語る文言を、簡単に発見できるとは思えません。


たとえば小学生時代の席替えで、初恋の相手がライバルの隣になった時、あるいは何らかの団体競技で、先発メンバーもしくはベンチ入りから漏れた時の感情を思い出してみてください。

その瞬間だけを切り取れば、自身こそが悲劇の主人公に違いありませんが、それでも一生懸命歯を食いしばり、無理に平静を装い、明るく振る舞ったあの日のことを。

それが仮に周囲の大人たち、すなわち人生の先人の目には一目瞭然だったとしても、見ている人はキチンと見てくれていますし、それは職場に於いても一緒です。

そしてそんな方々は、みなさんが「自分もあんなふうになりたい」と無意識のうちに憧れる、仕事上の優れたスキルだけではない、総合的な人間力という魅力を漂わせています。

ぜひ仕事を通じて出会った人たちの中に、自身が将来『なりたい背中』を自然に見せて魅せてくれている存在を、見つけ出す作業から着手してみてください。

職場という現場では、自らを取り巻く環境整備もまた、賃金を頂戴する中で各々が早急に着手すべき作業です。

あの日の自分が重なる戸惑いを隠せぬ、みなさんの後輩となる、現場に於ける人材すなわち『人財』に恥じない先輩、それこそが近未来のみなさんのあるべき姿なのです。

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