【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
続けることで新たな私を形成する
大阪府 石 田 牛 子 27歳

多様な経験でキャリアアップしていく柔軟さが評価される時代かもしれない。ひとつの企業に長く勤 めることは、古い考えだと思われる風潮がある。でも大切なのは、時代の流れに沿った働き方ではなく、 仕事を極めることである。私が新卒で働き、退職し、現在転職活動をしているなかで分かったことは、仕 事を続けることでその分野を極め、新たな自己を形成していくのだということである。特に、まだ人間 として成長段階にいる若い人にこそ、新たな自己を形成するために、仕事を続けてみることを私は推奨したい。

私は、新卒で入社した会社に4年務めた後、退職した。会社の方針が気に入らず、自身の仕事に意味 があるのかと悩み、辞める理由は充分にあったと思う。しかし、辞めてしばらくしてから転職活動を始めるにあたり、改めて退職した理由を突き詰めると、「私は逃げたんだ」と思うようになった。辞めたことで、素晴らしい発見と体験があったため、辞めたことを後悔することはない。ただ、前職についてだけ言えば、「逃げた」という言葉が当てはまるような気がする。

厚生労働省が公表している平成28年度の統計結果によると、就業者数の年齢階級別構成比では40代が 最も多く全体の24.6%を占め、20代は全体の14.9%に留まる。一方で離職者の年齢階級別構成比では、 10代と60歳以上を除くと、若ければ若いほど離職者が多いという結果となっており、20代の離職者が 27.6%も占めている。つまり、20代の離職率が高いということである。また、平成27年度の20代での自 己都合による離職の理由別転職者割合の調査を見ると、結婚・出産、介護・看病、病気・怪我、家族の 転居、というやむを得ない理由よりも、会社への不満による離職が大きく上回る。もちろん、労働に見 合った対価が支払われない場合や、精神を病む程追い詰められている人は、すぐに辞めるべきである。そ の場合を除いて考えると、20代は若さという特権から自らの可能性を信じ、今の職場に少しでも違和感 があれば離職するという判断に至りやすい。私自身もそうだった。売り手市場と言われている今、転職 活動をしていても不安に陥ることはない。しかし、どんな会社も職種も、自ら起業しない限りは自分に とって完璧と思えることはないということも分かった。気に入らないことも抱えながら、自分の理想を 実現するためにはどう工夫するのかを考えなくてはならない。かっこよく働いている人たちは、順風満 帆に見えて実際にはやりたくないと思うようなかっこ悪い仕事もこなしながら働いている。テレビで見 るような華やかな職業、例えばミュージシャンは、納得いかない曲しかできない時でも発表しなきゃい けない時があるはずだ。どんな職業の人にも納得のいかない仕事がある。それでもその仕事を続け、試 行錯誤を続ける中でその職業を極めたことで、他人には味わえない体験や結果を見てきたはずだ。気に 入らない、納得がいかない、そんな理由で悩んで次に行く前に、新しい自己を形成するような発見を求 めて続けてみるのもいいかもしれない。

私は現在転職活動中だが、次はもう逃げたくないと思っている。どんな職業で気に入らないことが あっても、納得できるよう工夫しながら続けることでその分野を極め、新たな私を形成したい。

 

参考文献

・「厚生労働省ホームページ」https://www.mhlw.go.jp/index.html

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