【佳作】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
大学入試を仕事につなぐ
豊島岡女子学園高等学校 森 川 彩 音 16歳

「君たちの年から、大学入試が変わる。主体性を持たないと生き残れないぞ。」中学校に入学してから、 幾度となくそう言われてきた。

「主体的な学び」を重視する大学入試改革によって、テストの点数だけでなく資格や検定の結果、部活、 外部のコンテストでとった賞なども評価対象となることになった。高校生はインターネット上の「ポートフォリオ」というサイトに自分の行った活動を登録し、大学入試に備えていくというのだ。

私はこの入試改革の概要を聞いた時、少し違和感を覚えた。従来のテストのみの入試と違って、学校 の勉強を頑張っても報われないのではないか。入試で評価された能力は本当に将来仕事に就いた時に役 に立つのか。先例がないこともあいまって、入試に対して私は不安を感じていた。

そんな中、学校で「科学探究」という新しい授業が始まった。この授業では数人のグループで解決した い問題を設定し、解決方法を考えて実験や試作をし、それについてクラス内で発表し、振り返りまでを行う。時間の制限があるので、闇雲に試作するのではなく論理的に計画を立てることも求められる。私 はこの授業は新入試には役立つし課題の解決に向けて協力するのは楽しいと思ったが、大人になっても 探究活動をするのは研究者などの専門職についている人だけだというイメージも持っていた。そんな時 先生がこう言った。

「大人はみんな探究活動が仕事だ。」

これを聞いて、私は今までの考え方が歪んでいたことに気づいた。

ほとんどの企業で行われている新商品の開発を例にとってみても、市場調査をして流行や既存の商品 の問題点を見つけ出す問題提起から始まり、社内でアイデアを練り、商品の試作、世に送り出してから の振り返り、次の商品の企画という探究活動の能力が求められる。企業の業績や収入に直結するため、 コストや時間の制限は探究活動よりもずっとシビアだ。論理的に考える力はますます重要になってくる。もちろん、大規模なプロジェクトを進めていくためには周りの人の言うことを鵜呑みにしてばかりはい られない。自分でアイデアや自分のできることを考えて周りの人に説明する主体性とコミュニケーション能力が欠かせないのだ。営業や広報などの他の職種でも、会社全体の業績を上げるためにはやはりこ の発案、実践、振り返りのプロセスとチームワークが重要だ。

新しい大学入試と仕事で求められる力の関連性を考えた時、私の新しい入試と将来仕事をすることに 対する不安は薄らいだ。新しい入試で求められているのは「大人として仕事をしていく」能力だ。高校 生のうちからその能力を磨いていけるのは大切だし、ありがたいことでもある。

今の段階では探究の能力は不十分だと自覚しているし、経験したことのない仕事の大変さや楽しさも まだたくさんあるだろう。そのため、いまのうちから探究活動に積極的に取り組み、仕事のための能力 を向上させていきたい。

大人になった時に、他人に流されることしかできないと後悔しないために。

 

参考文献

・「2020年 大学入試改革特集|Benesse マナビジョン」

https://manabi.benesse.ne.jp/nyushi/special/


・「河合塾 こう変わる!大学入試 〜2020年度からセンター試験に代わる試験を実施〜」

http://www.keinet.ne.jp/dnj/20/20kaisetsu_02.html


・「Y-SAPIX 動き始めた高大接続・大学入試改革を見据えて」

http://www.y-sapix.com/method/koudai-setuzoku/

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