【 奨 励 賞 】

【テーマ:さまざまな働き方をめぐる、わたしの提言】
北欧に見る『働く』とは
三重県 兼 岩 幸 男 60歳

赤字経営となった企業は救わないが、働く人は守る。

スウェーデンでの雇用をひと言でいうとこうなる。

経営難に陥った企業は残念ながら退場してもらう。しかし、失業者は職業訓練を受けて技能をスキル アップさせ再就職させる。積極的労働市場政策と言うそうだ。

かって経営難に陥り大量の解雇者を出した自動車メーカーのボルボ社やサーブ社も、政府は救済せず に外国企業に身売りさせた。そうすることで経済成長を可能としている。だから労使双方ともこの政策 を受け入れている。

中核は手厚い職業訓練だ。事務職の訓練を担う民間組織TRRは労使が運営資金を出している。会員 企業は3万5000社、対象労働者は95万人いる。

TRRの最高経営責任者は、「再就職までの平均失業期間は半年、大半が前職と同等か、それ以上の給 与の職に再就職している」と話す。

スウェーデンは6年前から新たな取り組みも始めている。大学入学前の若者に企業で4カ月間、職業 体験をしてもらい人材が必要な分野への進学を促す。

王位理工学アカデミーは理系の女性、日本でいうリケジョを育成する。この国には高校卒業後、進学 せず1~2年、ボランティアなどに打ち込むギャップイヤーという習慣があり、それを利用する。

研修を終えた20歳の女性は「生物に関心があったが、研修でバイオ技術とは何か分かった。医学も含 め幅広い関心を持てた」と話す。この秋からバイオ技術を学ぶための工科大に進学するという。

以上が世界の注目するスウェーデンモデルだ。解雇はあるが課練もある。だから働き続けられる。日 本は終身雇用制でやってきた。だが低成長時代に入り人員整理も不安定な非正規雇用も増大する。

人がだれも自分にふさわしく働き続けられるようにするには、日本でも新たな取り組みが必要になろ う。北欧にそのヒントはないだろうか。

経営難で収益力が落ちた企業は救わず、失業者を訓練して成長している分野の職場に送り込む。その 結果の経済成長率は2016年で3.3%だ。1%台の日本は水をあけられている。

スウェーデン社会がこの政策を選んだ理由は何だろうか。

雇用を守る労働組合にまず聞いた。組合員65万人が加盟する事務職系産別組合ユニオネンの委員長は 断言する。

「赤字企業を長続きさせるより、倒産させて失業した社員を積極的に再就職させる。成長分野に労働力 を移す方が経済成長する」

経営者はどう考えているのか。日本の経団連にあたるスウェーデン産業連盟の副会長は明快に話す。

「国際競争に勝つことを一番に考えるべきだ。そのためには(買ってくれる)外国企業にとって魅力ある企業でなければならない」労使双方が同じ意見だ。

人口がやっと1000万人を超えた小国である。生き残るには、国の競争力を高める質の高い労働力確保 が欠かせない。働く側も将来性のある仕事に移る方が利益になる。政府も後押ししており政労使三者は 一致している。

労働組合が経営側と歩調を合わせられるのは、70%という高い組織率を誇るからだ。企業との交渉力 があり、政府へは必要な支援策の充実などを実現させてきた。労組のない企業が多く組織率が20%を切 る日本ではこうした対応は難しいだろう。

しかし、新たな課題も押し寄せる。人工知能(AI)やITの進展で、職業訓練もより高度なものに ならざるを得ない。雇用されずに個人で事業をする人も増えている。働き方は時代で変わらねばならな いであろうと思う。

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