【努力賞】
【テーマ:さまざまな働き方をめぐる、わたしの提言】
ワーク・ライス・バカンス
岩手県  清野千尋  26歳

社会人になって5年が過ぎた。1990年生まれ、ゆとり世代の代表のような私も人並みに自分の責任を全うして、必死に社会の一員として働いてきたと思う。“必死に”働いてきた。何のために?

就活をしていて「何のために働くか」ということを考えると、人のためになりたいとか社会貢献とか誰かが言っていた抽象的なことばかり耳に残っていて、具体的に自分はどうするのかが分からないまま社会人になった。そして、実際に働きはじめて具体的に浮かんだことは、奨学金の返済があと何年とか生活費の工面とか先輩が困っているとき役に立てたとか、大きな社会という括りから見ると取るに足らない小さなことしかなかった。

しかし、学生時代のアルバイトから社会人になって5年経っても、一貫して変わらないあることに気が付いた。いつのときも私の支えになっていたのは「昼メシ」と「休日」ではなかったか!ということである。昼メシが美味しかったから午後も頑張れる、休日の旅行を楽しみに今月も頑張る、そして思い切り満喫して明日からまた頑張る。多くの人が感じることだろうとは思うが、私はこれを人一倍大切にしてきた自信がある。きっと、このことに気付かずおろそかにしていたら、私の働き方もずいぶん違うものになっていたと思う。

今年、ワークライフバランスコンサルタントという資格を取得した。これは、文字通り「仕事」と「生活」のバランスを見直して、短時間で成果を上げる効率の良い働き方にするための取組みである。“長時間労働で成果を上げていた高度経済成長期の働き方では現代は生き残ることが出来ない”、“定時に帰宅し自己研鑽する”、“モチベーションを保つことが効率へ繋がる”など、様々な分析に基づき実証されたデータや実際に取組んだ企業について知った。

しかし、これらの情報より心に響いたものがある。それは、この資格を通して知り合った方が言っていたこと。

「長時間労働してる会社とは付き合いたくない。もっと言うと、そういうとこの店にも行きたくない。」

これは、これからの社会人、そして消費者の一般論になるのではないだろうか。寝るだけの休日しかないような過酷なブラック企業にいたら、自分が買い物したり外食したり接客される顧客体験が出来ず、結局質の悪い接客しか出来なくなるのでは?リアル市場調査が出来ず、何が流行っているか分からないままつまらない商品を作ってしまうのでは?寝不足の頭で作業してミスを連発し、その回収で一日が終わってしまうのでは?

実際に、これらがもう起きているのだ。確かに、取引先やよく行く店がこうだったら私も付き合いたくなくなるだろう。ゆとりの私でさえ気付いているのだ。社会から関わりたくないと思われるのに、そんなに時間はかからないだろう。

私は資格取得後、自社をコンサルティングすることになった。夜遅くまで長引く会議の改善や、業務の見直し、休息の重要性を伝えるなどしていたが、まず私が見本とならなければ意味が無いので、今までより昼メシを大切にし、毎日必ず定時退社、有給休暇もしっかり取って旅行した。もちろん、その中で今までと同じ業務量をこなさなければならないので、大変な工夫や想像力を必要としたが、それさえも勤務時間内に編み出して提案し、上司からとても評価された。同僚からも「今まで遠慮してたけど、私も有給とりやすくなった!」と感謝された。

自分の仕事を誰かに認めてもらう、これまでにない充実感を味わった。取るに足らない私の小さな歓びが、会社としての取組みに変わり、社会からもワークライフバランスという活動として認められている。今まで、これほど社会に対して繋がりを感じたことはなかった。

昼メシと休日のために頑張ったら、仕事も上手くいくようになったのだ。すなわち、私のワークライフバランスは、ワーク・ライス・バカンスの3本柱で成り立っている。

戻る