【努力賞】
【テーマ:さまざまな働き方をめぐる、わたしの提言】
ブラック企業・ブラックバイト 問題解決に向けた一考察
日本大学商学部  加藤司  20歳

『ブラック企業』という言葉がひと昔前に世間で大きな話題を呼んだ。

ブラック企業は倫理的・法律的に反する従業員の使い方をしている企業として世間では使われている言葉で、2009年頃には「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」という『ブラック企業』を題材とした映画が公開された。また、近年ではブラック企業のような性質を持つアルバイトとして『ブラックバイト』という言葉も話題となった。具体的な事例として某外食チェーンの店長夫婦による当時アルバイト従業員であった大学生への暴行・恐喝、体調不良で仕事を休んだアルバイト店員に罰金を請求した事例が記憶に新しい。

ブラック企業・又はブラックバイトなど劣悪な労働環境に身をおき、心身ともにすり減ってしまっている方々は少なくないようなのだが、なぜここまで社会問題になっているにも関わらず『ブラック企業・ブラックバイト問題』は改善の兆しを見せていないのか。

そもそも、企業は利益追求を第一目的として掲げている組織である。つまり、ブラック企業になってしまうのは利益のために最大限の努力をした結果とも取ることができるのではないか。

長い間不況が続いている我が国日本では、法律に抵触するような従業員の扱い方をしなければ倒産の危機に面してしまうような企業が多く存在していると思われる。そのうえ、多くの業界がコモディティ化(流通している製品同士の価値の差がなくなってしまい、価格競争をするしかなくなってしまう状況のこと)している現代社会では、価格競争に勝ち抜き、企業が存続していくためには、人件費を削っていくしか方法がないのではないだろうか。人件費を削ろうとしていった結果、価格競争で負けることはなくなるが社員に残業代をつけずに法外な時間外労働をさせ、非常に低い給料を与えざるをえなくなってしまうのではないだろうか。

私は、この『ブラック企業・ブラックバイト問題』は前述のもの以外にも様々な要素が絡み合い、生じている問題だとみなしている。しかし、未来の労働者としては解決とまではいかなくても、状況が好転することを望んでいる。そこで私は未来の労働者・当事者としてこの問題を解決していくための解決策を提案していきたい。

まず一つ目として、会計監査を行う公認会計士のように、社員に不当な扱いをしていないか監査する『社員運用監査士』という職業および資格をつくことを解決策として提案する。第三者である監査士の視点から従業員に対して適切な待遇がなされているかを監査させることにより、外部の圧力により社員への不適切な待遇をさせないようにする狙いがある。しかし、これでは不況による企業自体の経営難を打破することはできないので、その点に関して何らかの対応をする必要がある。そういった懸念事項はあるが、労働者を守るという点に関して言えば有効な解決策ではないか。

私自身大学一年生の頃に勤務していたアルバイト先で面接の際に「学生の本分は学業であるので大学の試験・資格試験(学業)を優先したい」と伝え、その場では承諾されたが、後日試験前・資格試験前にもかかわらず多くのシフトを入れられてしまった経験、1限に講義がある日の夜遅くまでシフトを入れられてしまった経験がある。これは『ブラックバイト』であると断言することができるほどの出来事ではないかもしれないが、私自身が肌で感じた『小さなブラック』だ。

『ブラック企業・ブラックバイト問題』は遠い世界の話ではない、この国のどこかで現在も進行している身近な問題である。そんな『ブラック企業・ブラックバイト』問題が改善していくにつれ、問題視されている自殺率も下げて行くこともでき、人々がゆとりを持って生活していくことができるのではないか。そのためには景気改善に努めるとともに『私の提案した解決策』を適用するべきだと私は考える。

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