【努力賞】
【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
美辞麗句+巧言令色=羊頭狗肉
山梨県  大谷修  45歳

「うまくやられたな…」「やり方がずるい」「信用した自分がバカだったのか…」「書いてあることと、全然違う」採用になった仲間が口々に発した。

オープニングスタッフ募集の求人広告には雇用期間が2ヶ月はあるような記載だったが、2週間にも満たない期間働いただけで「勤務はオープン前までとなります」「ん?」「仕事量が減るし、いつ仕事が発生するか分からないし、週に1〜2日、短時間だけかもしれない。それでも続けますか?」「!?」「退職届を渡しますので、書いて下さい」「んん?」呆然としている間に一方的にムチャクチャなことを平気で言ってきた。「こんな書類、自分から書いちゃダメだよ。俺は絶対に書かねェ!」と、仲間の雑談で憤る男性がいた。自分は「こんなところはもうかかわりたくない」と嫌気がさし、サッサと記入・提出した。退いた。

採用時に労働契約書を交わしたが、雇用期間等の肝心なところは「空欄のまま出して」と、ほとんどが白紙の状態で提出を求められたことを振り返ると、“白紙委任状”に近くその後の伏線だったと後になって気付く。

採用面接では平身低頭。質問・疑問に丁寧に答え、勤務時の服装についても細かくレクチャーしていた、あの幹部スタッフ。腹の中で「早く切られるのに、真剣に話を聞いていて気の毒な人たち…」と思っていたに違いない。憤ったところで、余計虚しさが去来する。

地元の雇用に貢献するような美辞麗句、「皆さんの力が必要です」的な巧言令色の数々は羊頭狗肉だった。わずかな期間でも雇用した私たち地元の人間(=お客様になりうる人たち)を欺き、裏切るような行為は、“お客様にならなくて結構”と宣言しているようなもの。オープン前から地元の人間を敵に回すような対応は、“近江商人”の思想・行動哲学の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)の対極にある。

教訓として得たのは、労働基準法や労働契約書など労働者として最低限知っておかなければならない知識をしっかり身につけておかなければいけない、ということ。知らないことで、結果として不利益を被ることになる。「知らない方が悪い」という自省・自責の念を持ったのも事実。

前述した「俺は絶対に書かねェ!」と憤った男性は、過去に雇用や退職に関してつらい経験をしているのか、自分の身を守るために必要な知識を習得したのかは知らない。しかし、「自己都合退職」なのか「解雇」なのかをハッキリさせることが重要なのだと遅ればせながら知る。

労働基準法第20条、第21条をうまく利用したのでは?

「働くって何だろう」それは、雇用する側が雇用者を選考するように、雇用される側も雇用主を見極めることも含まれる、と思う。

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