【佳作】

【テーマ:仕事を通じて、こんな夢をかなえたい】
これからの私の未来予想図
新潟県  関野香織  39歳

“人の一生ってあっけないな…。” 母の四十九日も無事に終えた、ある日、ふっと思った。(私、このままでいいのかな…。)

仕事はとても充実していた。でも、まだ自分のキャリアに納得できない、いつも心にひっかかっていることがあった。(私、まだやりたいことあったよね。)社会人として、仕事でも認められ、それなりに自分らしく働けていて、どこにも不満はなかった。ただ、母の死をきっかけに(せっかくの人生、後悔したくない。)と強く思うようになった。最後の可能性に賭けたい。(そうだ、自分の為に、行きたかった大学院でもう一度学び直そう。今しかない。)と、突然思い立った私は、母を失った悲しみや寂しさを吹き飛ばすかのように、すぐに、情報を集め調べて、自分の条件に合った大学院に運良く巡り合うことができた。

早速その大学院の説明会に足を運び、今後の進路の不安を相談した。とても丁寧にアドバイスしてもらい、無職になっても心配なく学業に専念できることを知り、受験を決意した。それからの私は、仕事をしながら、朝は4時に起床し、週末も惜しんで勉強した。その甲斐があってか、無事に合格することができた。それは、決心してからわずか2か月余りの出来事だった。父から「よくやったね。」と言われた時は涙が出た。普通だったら、無職になってまで学生に戻ろうとしている娘だ。反対されて当然だった。しかし、父は心から私を応援してくれ、合格まで励まし続けてくれた。

無事決まった大学院は県内にある国立の教育大学院。この大学院に決めた理由は、私がこれまで無業の若者の就労支援に携わってきた中で、その後の将来に関わる躓きや問題の多くは彼らが過ごした学生生活の中で起こっているのでは…と感じていたことが大きい。その為、私自身が、教育の現場の中で、進路指導や生き方在り方の教育がどのように行われているのかを学び、課題があるのならば、その解決策を探り、一人でも多くの若者が自信を持って社会に出られるような研究を行いたいと考えたこと、もう一つには教員免許を取得して、実際に教師として子供達と関わりながら、一人一人が夢のある未来図

を描けるよう共に学び、育んでいきたいと思ったからだ。

退職の日、職場の人からは労いと励ましの言葉を沢山頂いた。また関わっていた若者からも温かいメッセージもらった。(この子たちの為にも、未来に希望が持てるような、いい研究をしよう。)心からそう思った。

入学式は20年前のあの時とは違い、父も母もそこにはいなかったが、不安は殆んど無く、心は晴れやかだった。(きっと大丈夫。)そう自分に言い聞かせていた。

あれから3カ月、20代の若者に交じり、四苦八苦しながら学生生活を送っている。皆から手解きを受け始めたラインも今は学生生活を支える必須アイテムだ。ゼミの先生をはじめ、仲間にも恵まれ感謝に尽きない。授業だけでも目が回る忙しさだが、茶道部とLANPという外国につながる子ども達の学習支援を行っているボランティアチームにも参加し、週に1度、市内の学校に通う生徒の学習をサポートしている。こんな日々が送れるのも、周囲の励ましとこれまで支えてくれた家族の存在があってこそだと心から思う。無事に修士号を取り、教員になれたら、子供達が、その子達らしく伸び伸びと未来を描けるようなキャリア教育を実践していきたい。そして、外国につながる子供達の学習や進学のサポートにも携わりたいと思っている。

私は今、第2の人生のスタートを切ったばかりだ。挑戦することも、諦めることも、いつでもできる。であれば失敗を恐れず挑戦しよう。未来予想図は描き方次第で無限に広がることを、私は身を以て実感した。強く願えば絶対かなう。このことをこれから出会うだろう多くの子供達に伝えていきたい。それが、今の私のかなえたい大きな夢だ。

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