【 努力賞 】
【テーマ:働くこと・職探しを通じて学んだこと】
余白ばかりの経歴書
千葉県  にわか  21歳

大学を1年半で辞めてはじめた仕事を1年半で辞め、手元に残ったのは返済しきれなかった奨学金30万円。

そして、同級生の大学4年生は初めての、私には2回目の就職活動。

同級生が就職活動に苦しむなか、私は社会に求人広告があふれていることを知っている。人材不足を嘆いている会社が多くあることを肌で感じた1年半の社会人生活だった。

その社会人生活、中途採用で入った会社を辞めることになった原因は自分にあった。

「がんばりすぎ」職場の一回り二回り離れた人生の先輩でもある方に幾度も心配され、掛けられた台詞を、そのときは他人事みたいに受け止めていた。がんばりすぎていた自覚がなかった。それが普通で当たり前だと思っていた。私は不器用、らしい。だから、その意味に気付くのに1年弱かかり、気付いたときには手遅れだったのだろうか“がんばりすぎ”たらしい私は1年半で限界を迎えた。たった1年半、だった。

私のその“がんばり”は大きいことに隠れた小さいことの積み重ねで、「なにがつらいの?」店長に尋ねられたとき、私は答えられなかった。涙が出た。 たくさんある気がしたのに、私を追い詰めたのは小さいことの積み重ねであったのは確かなのに、その小さなことたちはすぐに浮かんではこなかった。

なにがつらいのだろう?満員電車に揺られて出る新宿、22時帰宅、19歳の自分、初めての社会人、抜けなく漏れなく誰に迷惑をかけることもなく………ただ毎日がつらいんです、そんなの戯言で弱音じゃないですか、

なにができるんだろう?学歴も職歴も中途半端な私に。

最低限の生活を送るための最低限に安定した給与のために、自分が磨り減らされていく、毎日毎日毎日。体重は5キロ減った、胃痛、胸焼け、眼振、ガタガタに生えてくる爪、そこまでして仕事を辞めた私の手元に残ったのは働いている間に返済しきれなかった奨学金30万円と、漠然とした大きな黒い不安。

新卒で正社員入社(できれば大企業)、そりゃ真っ当で凄いですね、人生天晴れか?一度脱線したら一生元には戻れないのか?これが正解だと思い込んでしがみついていたものが沢山あって、ほんとうはそれ以外にも私はなんでも選べるのに。

大学中退、職歴は1年半の契約社員ぽっきりの21歳。15才からアルバイトを始め大学時代は学費のためと、もう500万円程は稼いだだろう、少しくらいゆっくり生きてもいいはずなんだ。仕事を辞めて、しばらくしてから届く住民税の納付書に驚きつつ、大人になるってこういうことなのだと妙に納得をした。税金を納め、年金を支払い、地に足をつけ生活をしていく。

好きを一生の仕事にできたらどれだけよかったろう、でもきっとそうはならなかった人のほうが多いはずだ。

寄り道も回り道も、自ら引いたコースからの脱線も、それは全て自分で起こせることなのだ。高層ビルのオフィスで働いていたときに忘れてしまったことだった。

人は死ぬときにお金がほしいとは思わない、思い浮かぶのは“あれをしておけばよかった、これをしておけばよかった……”だと思う。

私はまだ勉強がしたい。小説を読み耽りたい。観たい映画がたくさん溜まっている……それはすべて私の人生、自分のために。

2週間後から、わたしは小さい頃から憧れていた書店員のアルバイトをはじめる。人生初めてのフリーターだ。

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