【 努力賞 】
【テーマ:仕事を通じて実現したい夢】
働き方改革をめざして
慶応義塾大学  R.S.  21歳

「日本の働き方を変えたい」

私は私立大学に通う大学4年生です。来年に就職を控えた今、私はこんな壮大な目標を、本気で成し遂げたいと思っています。

 私は4人家族の長女として生まれました。父は私が小さな頃から、早朝に出勤し深夜にまで働いてくれている一家の大黒柱です。母は、子どものことをいつも一番に考えてくれる、私たち娘の一番の味方です。そんな母の意向もあって私と妹は中学校から私立の学校に通いましたが、私たちの中学進学は我が家の1つの転機となりました。

私の家庭は決して貧乏ではありませんでしたが、娘2人を私立に通わせるとなると経済的に厳しく、私は奨学金を受給していました。そんな事情から、それまで専業主婦だった母が、当時からフルタイムで働くようになりました。父の仕事中心の働き方は、母が働き始めても変えられるわけではありません。私も部活、アルバイトと夜の用事が増えていき、家に帰るのが遅くなりました。主婦だった分家事をきちんとやり続けようとしてくれた母の負担は次第に増えました。ところが、母が働いてもなお私たちの教育費が重い。両親は喧嘩をすることが多くなりました。

私は現実を目の当たりにしました。父の様に仕事で出世をしていくためには朝から晩まで働かなければいけない。母の様に家庭にも目を向けるためには、仕事で多くを「稼ぐ」ことは見込めない。子どものために両親が尽くしてくれるほど、家族のコミュニケーションはうまくとれなくなる。私は両親のおかげで今まで不自由を感じずに立派な教育を受けてこられました。しかし、子どもに投資をすることは実はとてもハードルが高いことでした。大学に入り将来のことを考えるようになった私は、そんな現実を前にあまり明るい未来は描けませんでした。

 しかし、そんな私の考えはある女性のTEDxTOKYOでのプレゼンテーションによって覆されました。その女性、小室淑恵さんは、お子さんを2人育てながら経営者としても活躍されている方です。彼女の存在を知り、子持ちの女性でも最前線で活躍できるという希望が私に生まれました。どうすればそんな女性になれるのか、その秘訣は「生産性を高めること」でした。仕事において大事なのは量(時間)ではなく質(生産性)であることを働く本人も企業も理解することが大事。私は彼女からそれを学びました。

私は「働き方」についてもっと理解を深めようと、ゼミで労働経済学を専攻しました。ゼミでは、日本経済というより広い視点で働き方について考えました。すると、日本の女性活躍の問題や、働く人の生産性の低さなどが、人口減少と相まって将来の大きな負担へつながるだろうことがわかりました。また、女性だけでなく男性も働き方を変えていかなければいけないということにも気づきました。働き方を変えて多様な人々が活躍できる環境をつくることが社会全体のためになるという確信さえ生まれました。

かつて私は、主婦かキャリアウーマンかの二択しかないことに絶望的な気持ちでいました。今となっては、その二択しかないと考えている女性がいることに対して大きな危機感を抱いています。女性という観点だけでは根本的な解決はできません。父親は夜遅くに帰ってくるものだという常識を崩したい、長く働くだけ会社で偉くなれるという常識を壊したい…。そのためにも、男性社員の労働時間、企業と労働者(正社員)の関係など、他にも見直さなければならないことは沢山あります。

それらの問題を解決するために、私は来年から、人事や経営のコンサルタントとして成長していくことを決めました。より多くの企業でより多くの人々が、性別やその他の属性に関わらず活躍できる社会をつくっていきます。より多くの家族がより明るい未来を築けるよう、私自身も未来の女性のロールモデルとなっていこうと強く思います。

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