【 努力賞 】
【 テーマ:働くこと・職探しを通じて学んだこと】
障害当事者の就労と就労支援専門部会
千葉県  横 山 典 子 44歳

障害者総合支援法によって、障害当事者の就労支援が進んだのは、事実である。しかし、専門家に都合の良い障害当事者だけが支援を受けているとしか私には思えない。支援の枠組みに入れない障害当事者は、自力で仕事を探すしかない。支援がなければ障害者枠は厳しく、一般就労のパートや短期の仕事をするケースが多い。だが、急にお金が必要となり、その分だけ働きたくても、即戦力を要する1日バイトには雇われない。支援の枠組みに合わないと専門家が判断すると、職業訓練や適正検査は受けられない。私も、障害者職業センターで、手話通訳者になりたいと言ったら、即門前払いだった。かと言って、求人広告で見つけた会社へ面接に行くと、長時間労働が無理な障害でも残業は当然と言われ、何のための勤務時間かと首をかしげてしまう。ある社会福祉法人の理事長だった方は、精神障害者でも採用試験に応募の際は、障害をオープンにせずクローズにして欲しいとおっしゃった。

 地方自治体では、総合支援協議会が組織され、その中に就労支援専門部会も設けられているが、委員は専門家が多く、障害当事者は1人いればいい方である。議論の内容も、就労支援事業所関係が中心で、障害当事者が仕事の悩みを発言しても「一応、聞いておきます」という程度で終わってしまう。障害当事者委員については、障害福祉課長から「障害当事者なら、誰でもいいのではない。プロの障害当事者に来て欲しい」と厳しい注文がつく。けれど、プロの障害当事者と称される人は、障害当事者の中でもエリートで、本当に障害当事者の代表かは疑問である。どうしても、プロの障害当事者を委員にするなら、その人と真に障害当事者を代表する人と、2人の障害当事者を、両者とも委員にすべきである。そして、このような会に出席して謝金や交通費が得られるなら、委員も障害当事者の就労となるが、一旦委員に就任すると、本人は1期限りのつもりでも、よほどのことがない限り留任させられる。地方自治体が、新しい人材を探す努力をしていない証拠だが、長期間委員でいると「肩書に弱い人」とレッテルを貼られる。

 何とか障害当事者が仕事に就いても、その後の支援は不十分である。仕事が休みの日に日中活動の場へ行くと、寄付金を強要されるだけで、ストレスがたまり仕事の悩みを話せば「仕事できていいね」と他の利用者にさえぎられ、後は黙るしかない。自助グループで解消しようにも、自ら自助グループを設立すると他の障害当事者は、参加はしても運営にまでは協力せず、発起人が運営全般を担う形となりかえって負担が増し、別の悩みが生じる。そういうことをどうしたら良いか、解決策を探るのも就労支援専門部会の役割ではないかと私は考えていたが、専門家ではそこまで想定できないのか、議題には挙がらない。

 このままでは、就労を希望する障害当事者を潰すことにもなりかねない。地方自治体は、もっと就労支援専門部会を活性化し、就労を希望する障害当事者に寄り添う必要がある。地方自治体によっては、地方精神保健福祉審議会等、必置ではない会を開いたりして、真に支援を要する障害当事者を後回しにしている。そんな予算があるならもっと就労支援専門部会へ回し、具体的な方策を考案・実施すべきである。また、国も地方自治体へ積極的に指導に入るべきであろう。障害当事者の可能性が広がれば広がるほど、就労支援専門部会の役割は、拡大するはずである。短所を大幅に見直し、きちんと役割を果たしてこそ、障害当事者のための就労支援専門部会である。税金の無駄遣いとならないよう、障害者虐待や障害者差別が起きないよう、障害当事者のためにしっかり仕事をしていただきたい。

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