【 努力賞 】
【 テーマ:多様な働き方への提言】
多様な街から帰って来たら
東京都  こやまり 43歳

9時に出勤、すぐに電話が鳴りますー仕事のカウンターパートのジョンより、次の打ち合わせの相談。あ、上司のスケジュールも押さえないとー上司の秘書のエレナに連絡。11時、ミスター・パーカーを訪問し、次の会議の主題を相談。ランチのとき、隣の部署のジュリアンに相談ごと。午後はロペス部長の下での会議に出席…。あっというまに夕方。忙しい1日が終わり、バタバタ家に。娘が迎えてくれます。「ママー、お帰り。カレンのおじさんが結婚するって。相手は10歳年下の男の人だってー」「お帰り。ご飯できているよ」と主人。

昨年までの私たち一家の毎日です。母親である私の赴任で、私たちはニューヨークで三年間暮らしました。主人は仕事を休み、主夫になりました。ニューヨークはなんでもありの多様性の街。主人のように主夫も当たり前。仕事上の夫婦同伴の集まりでも同性カップル参加も当たり前。職場で多文化コミュニケーションなんて、当たり前の当たり前。

昨年、私は日本に帰り、管理職になりました。帰国したばかりの娘は見事な帰国子女。しかし、学校の適応に四苦八苦。主人は仕事に復帰。さらに父が倒れ、入院しました。もはや長い残業はできません。その代わり、毎日日中は、ランチの時間もないほど働きまくります。前例のない新規の仕事もいくつか行いました。部下の相談にも可能な限り時間を費やしました。早く帰るため、迷惑をかけることもありましたが、成果を出したと思っていました。ワークライフバランスを上司自ら実践することも重要と考えました。しかし、数ヶ月後の人事評価は、かつてみたこともない低い評価。残業しない管理職なんてあり得ないと、通告された気がしました。

日本でも最近言われる多様性ですが、今はまだ均一であり、逸脱を許さない国と実感します。周囲を見回してください。ワークライフバランスの推進は、見せかけだけの掛け言葉ではありませんか。LGBTの方が採用面接に来ただけで、騒然としていませんか。外国人にこの仕事は向かないと決めつけていませんか。子育て中の女性はやはり使えないと心の底で考えていませんか。

日本の職場も、多様な働き方、多様な人材など、様々な多様性に柔軟に応える場であってほしいと思います。組織のトップが、言葉だけでなく実践することです。多様性に応じた人事管理にはスキルが必要です。管理職が全ての人に公平に同じように一つのパターンで接していては、多様性は活かせません。様々な立場の人が様々な働き方ができ、最大限力を発揮し、効率化できるためには、それぞれの立場の人に応じた仕事の配分と連絡体制の強化などの管理スキルが必要です。

スキル不足を棚に上げ、多様性を排除する組織は衰退するでしょう。多様性は、日本の国際化と幅広い視点の確保に必要です。日本全体、覚悟を持ち多様性に取り組んでほしいと思います。え?無理?あなたには管理職の資格ありませんよ!

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