【 努力賞 】
【テーマ:仕事・職場・転職から学んだこと】
ひとりひとりが大事に見られる社会へ
宮城県 ゆき 26歳

新卒で入社し約2年勤めた会社を辞めた。就職活動中、内定がなかなか決まらず、やっと決まった就職先でもあり、また福利厚生も充実している会社であることから、辞めるかどうか直前まで大変悩んだ。しかし、体調の悪化から、これ以上この職場に勤めることはできないと考え、退職することにした。現在は転職し派遣社員として働いている。私は正社員だった頃と派遣社員をしている現在とで仕事に対する考えが大きく変化したの。それをお伝えしたい。

元の会社では「この会社でずっと働こう」と考えていた。今思えばとても視野が狭かったと思う。外の世界をよく見れば、仕事には他にも選択肢があるとわかったはずである。しかし、当時の私は長く同じ職場で働くことが正しいことだと考えていた。そのため、体調が悪くなっても、周りに迷惑をかけまいと休まずに仕事に行った。何がそこまで私を意地にさせていたのか。それは「正社員」という肩書きであったと思う。正社員として働いていれば、一定の給料はもらえて、生活していける。これからの生活が保障されている。だから、ここにいれば安心だ、そう思いその「正社員」という肩書きを手放したくなかったのだ。

体調を崩し退職して、休養をとった後、転職活動を始めたが、なかなか次の就職先が決まらなかった。長く同じ会社に勤めたいという気持ちが強く、正社員のみで探していた。しかし一向に決まらないため、派遣社員で探した。職場は驚くほど早く決まった。派遣先では、10年近く勤めた方の代理をすることになっていたので、早く仕事を覚えなくてはと、新入社員の頃よりもより真剣に仕事に取り組んでいたと思う。代理の方の代わりになれるように、仕事を一生懸命にやらなくては、という気持ちでがむしゃらに仕事に向き合う日々だった。

正社員の時と派遣社員の今を比較すると、自分の仕事に対する考えが大きく変わったと思う。正社員の頃は、「正社員」という今の安定した状況に何が何でもしがみつきたいという気持ちがあった。しかし一方で正社員であることが仕事の甘えにもつながっていたと思う。正社員は簡単にやめさせられないだろうという考えが自分の中にあった。それ故に、「まあこれくらいでいいだろう」という感じで、どこか妥協して仕事をしていたと思う。一方、派遣社員である今は、目の前にあることをただまじめに取り組もうという気持ちが強い。理由は、「正社員」という肩書きがない分、自分の仕事によって厳しく評価される状況にあり、それが自分を律しているからだと感じる。派遣社員は他に代わりがいるし、実際に、仕事がうまくできないと、契約が更新されず、仕事をなくすことだってあり得る。だからこそ、自分が今できる精一杯のことをやろうと、自分を鼓舞する気持ちで仕事をするようになった。

私が今強く言いたいことは、正社員・非正規社員関係なく、各々の仕事を評価する仕組みを作ってほしいということだ。大事なのは、正社員か非正規社員かということではない。給料や待遇など仕事によって受ける、いわば報酬のようなものについて、仕事の質や量に見合った報酬が与えられているとは今は考えにくい。実際に職場でもあったことであるが、非正規社員で働いていたとしても、その事務所で一番くらいに要領良く仕事をする人だっている。また、自分について考えれば、正社員という枠に安心しきって自分に甘えてしまい、仕事の質が低かったと思う。実際に全く仕事をしないにも関わらず、正社員として給料をもらっている人間がいるのも見ている。正社員・非正規社員と区別するのではなく、責任をもち仕事をする人には、それに見合った評価をする。一生懸命に仕事をする人間が、正当に評価され、しっかりと社会の中で育ち、将来的に社会に貢献できる。そのような制度を作ることが必要ではないかと、それが社会の、人々の生きる意味を持つことに繋がるのではないかと考えている。

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