【 努力賞 】
【テーマ:仕事・職場・転職から学んだこと】
無駄な経験はない
北海道 なちょ 26歳

なんでこんなことしているんだろう。

そう心の中でつぶやき新作の洋服をハンガーにかけた。その日も終電までの残業だった。

わたしは幼い頃から映画が好きで、映画館に行くと必ず映画のフライヤーを持って帰っていた。これからどんな映画が公開されるのか一目で見てわかるその一枚の紙に、幼ながらにものすごく魅力を感じた。ワクワクした。

「わたしも映画のフライヤーを作る人になりたい!」

いつしかムクムクと膨れ上がった夢と共に親元を離れ、映画のフライヤーを作るべくデザインの専門学校に入学した。
昔から絵は得意で、手先も器用な方だったので学校生活は絶対楽しいはず!確証のない自信だけで地元を離れ、一人暮らしを始めた。

しかし、描いていた学校生活は想像でしかなく、私は井の中の蛙だった。私より絵のうまい子も手先の器用な子もたくさんいたのだ。今考えてみても昔の自分が恥ずかしくてたまらなくなる。

周りと比べては落ち込み、肥大化していた自信はどんどん萎れていった。好きだったはずの「デザイン」することに段々辟易していった。

そしていつしか「映画のフライヤー作りたい!」と声にだして言うこともできなくなった。そんな夢を言うことが恥ずかしいとさえ思った。

わたしが就職するころ就職氷河期真っ只中で、親を早く安心させたくて流されるままアパレル会社に入社した。WEBショップの担当として毎日服にまみれながら残業。だんだんと心が荒んでいくのがわかった。
「こんなことやったって無駄」
虚しい気持ちと共にやっぱり映画のフライヤーを作るという夢が諦められず2年半が経過した。やりたいことはあるのに自信がなくて行動にも移せない。一番は自分に苛立ちを感じていた。

ある日職場の先輩とご飯に行くことになった。わたしはひそかに抱えていたその夢と悩みを彼女に打ち明けた。

「どんなこともやって無駄なことはないよ。今はそう思わないかもしれないけれど、後から必ず役に立つときが必ずくるよ」

スッと言葉が馴染んだ。すべて投げやりになっていた自分のことを見直そうと思った。すごく反省した。

そして社会人4年目でわたしが所属していたWEB部署は廃止され、他店舗に移動することになった。デスクワーク中心から店頭で対面販売をすることになった。
業種が違うので不安もあり、自分がやりたい事とどんどんかけ離れていくようで迷いはあった。
でもあのとき先輩が言ってくれた「やって無駄なことはない」という言葉が励みになり、やらないでダメだと決めつけるのはやめようと思い、異動を決意した。

最初はギャップもあり大変だったけど、WEBショップも店頭販売も“お客様”がいるから成立していることなんだ。そんな風に思えた時、WEBショップの経験が活かされていると実感した。

1年販売員として働き、自分の顧客も増え、職場の人にも恵まれ、楽しく働くことができましたが、「やっぱりデザインがしたい」と思い5年目で新卒で働いていた会社を退職しました。

現在はWEBデザイナーとして転職し、1年半経過した。まだまだ「映画のフライヤーを作る!」という夢までの実現は難しいかもしれないけれど、私は私のペースで遠回りしても必ず叶えよう。
自分の夢を口に出して言うのが恥ずかしいと思っていたあの頃の自分が恥ずかしい。

「何事もやって無駄なことはない」そう仕事を通して思えたからこそ、一見関係ない仕事でさえもとても意味のあることだと思えるし、キラキラ輝いてみえる。
「仕事」は色々あるけれど経験は必ず自分を成長させてくれる。そして最初からダメだと決めつける先入観を振り払い、いつも真っ新な目で「経験」を吸収していこうと思う。

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