【 佳 作 】

【テーマ:仕事・職場・転職から学んだこと】
採用面接
和歌山県 いっしゅ 23歳

「女性は家庭を持つとハンデだから」「自分の都合で結婚して、子ども産んで、休みとったり辞めたりするでしょ?面倒なのよね」

就職活動中だった私は面接官の言葉に耳を疑った。男女雇用機会均等法のある時代の発言とは思えなかった。そして、そのうちの一人が女性だったことにもショックを受けた。女性への就職差別は、男性から女性に対するものとは限らない。心に根付いた考えは、法律ができてもすぐに変わるものではないと実感した。

最近の独身女性の中には、キャリアの為に結婚をしない人も増えている。この女性面接官がどうであったかは分からない。しかし、女性のキャリアアップに貢献できるはずの女性労働者が、結婚を理由に女性を雇用したがらないのだとしたら、とても悲しい現実だ。

1年前にマルタ共和国で短期留学をしたときに、日本とマルタの仕事に対する考え方の違いを感じた。

留学先の学校では、仕事をやめて留学に来ていた韓国人の生徒がいた。その子が教室で「この時間は私の人生の宝物。二度とこんなにも外国に滞在できることはないだろう」と発言した。ブランクを空けた後の転職の難しさを考えたとき、私にはその気持ちがよく分かった。しかし、マルタの先生は違った。「そんなに悲観的にならないで?一か月でもいいから休みを取ってまた遊びに来たらいいじゃない」と返したのだ。日本では長くても1週間ほどの休みを取ることが限界だろう。同じ一度きりの人生、こんなにも自由に時間を使って働ける国があるのかと衝撃が走った。

ホストマザーは警察官をしていたが、16時には家に帰ってきていた。「日本では16時に帰れることはまずなくて、多くの人は残業で21時を過ぎてから帰っている」私がそう話すと、ホストマザーは驚いた表情で、「プライベートの時間がないじゃない」と言った。

日本でも、男女ともに定時帰宅・育児休暇・年次有給休暇といった制度は整っている。しかし、その制度の利用は、昇進や職場復帰への悪影響が懸念される。また、マルタでは転勤が少ない。引越しで妻が仕事を辞めるケースや、単身赴任で育児の負担が全て妻にかかり、仕事を続けられなくなる可能性は低いのだ。

「育児をしたい男性はどうなるの?自分の子どもなのだから、家族と過ごす時間を取りたいのは自然なことでしょう?」とホストマザーは聞く。

仕事自体のやりがいはもちろんだが、プライベートの充実は働くモチベーションにつながる。しかし、現在の日本の職場でプライベートを優先することは「反感の目」が避けられない。働きたい女性に優しくない労働環境は、家庭での時間を取りたい男性にも優しくない労働環境なのだ。

私は自分のライフスタイルに合ったとても良い職場で働くことが出来ている。休みたいときに快く休暇を取らせてもらえる温かい環境だ。結婚後も続けていきたいし、そうすることが女性の労働環境の改善にも繋がるだろう。こういった安心できる職場環境を守り、広げていけたらと思う。

また、職場だけでなく各家庭も変わる必要がある。日本の専業主婦と働く夫の家庭のうち、夫が一日に家事と育児に費やす時間は1時間。残念なことに、共働きの夫婦でもこの時間は同じだ。「家事育児は女の役目」という意識があるのか、男性に自由な時間が増えたとしても、その時間を家庭にあてなければ女性は働きにくいままだろう。少しの思いやりが、仕事と家庭の両立を実現するのかもしれない。

私に子どもが生まれて、その子が大人になる頃には、性別に関わらず多様なライフスタイルが認められる時代が来ていたら嬉しい。家族がいること、守るべき大切なものがあるということは素晴らしいことだ。結婚が仕事の邪魔になったり、仕事が家庭を苦しめたりするものではなく、人生をより豊かにするものになっていてほしい。

採用面接の際、悲しい言葉を聞かなくて済む社会。女性が働くということは、そんな日本の未来を担っている。

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