【 佳 作 】

【テーマ:仕事・職場・転職から学んだこと】
アルバイトで得るのはお金だけか
日本大学商学部 岡野正吾 20歳

私は大学生になって初めてアルバイトをした。最初にしたアルバイトは中華街のカフェでのウェイターだった。だが、働き甲斐を感じられなくて半年で辞めてしまった。
辞めた理由はいくつかある。まず、コミュニケーションがほとんどないということ。それは店員−店員と店員−お客の両方だった。おかげで、アルバイトをする時間はお金を稼ぎに行くといった感覚だ。

さらに、言われたことしかやらず、自分から何かをやるということはなかった。それは楽をして稼ごうと思っていたからだと思う。

その後、友人から地元の焼鳥屋でのアルバイトを紹介してもらった。今も続けているアルバイトだ。このお店は40年以上前からあり、テレビや雑誌にも取り上げられる有名店だ。ここは地元の常連さんからテレビを見て地方から来たというお客さんまで集まる。

働き始めた当初は以前の惰性でやはり楽をしようとしていた。お客さんや友達と話したりすることはせず、仕事も避けていた。しかし、それを店長に見抜かれ説教された。その時の言葉が印象的で忘れられない。「お客さんが言葉にする前に行動できるようになりなさい」という言葉だ。この言葉には様々な意味がこめられている。

まず、楽をするのではなくお客さんとちゃんと向き合えという意味だ。「お客さんはこちらにやる気がないと分かるともう二度と来てくれない」と言われた時に自分がしているアルバイトの責任の重さを感じた。また、わざわざ地方から来てくれたお客さんに失礼な態度で接客してしまっていたら、と考えると胸が申し訳なさでいっぱいになった。

次に、ここでの経験を社会人になっても活かしてほしいという意味だった。経験とはコミュニケーション能力、注意力、言葉遣い、お客さんへの配慮など、様々だ。「就職したとき、先輩が言うより先に仕事が出来たら他の同期より一枚上手になれるぞ」という言葉を受けた時は確かにそうだなぁとうなずいてしまった。

最後に、楽しくアルバイトしてほしいという意味だ。お客さんも自分も楽しく過ごすにはそういった配慮が必要だという意味合いだと私は考えている。その先にお客さんと仲良くなる、様々な話を聞けるというのがあるはずだ。お店に来るお客さんは中年〜高齢の方が多い。そういった方々からは就活の話や趣味の話から人生の話に至るまで、様々な深い話を聞けることが多い。そういった貴重な話を聞ける機会を自分自身が作り出せるのは面白く、ためになる。

以前のアルバイト先では叱られることや、真剣に話し合うことはほとんどなかった。それを面倒だとも感じていた。しかし、ただお金を稼ぐのではなくアルバイトを通して何かを得るという考え方を知った今、それを面倒だとは思わない。指摘されることで自分がレベルアップするという風に考えている。

レベルアップした今、お客さん、社員さんや友達と話す機会が格段に多くなった。それのせいか、地元の話をよくする。自分がまだ知らなかった歴史、行った事のないお店を紹介してもらうなど、地元のことを改めて知る機会も格段と増えた。 それ以外にも、自分自身に力が付いた。コミュニケーション能力、思いやりや配慮、言葉遣いなどだ。特に力が付いたと感じるのは、初対面の方や年配の方に対して物怖じすることが無くなったことだ。

大学の友達は時給の良いアルバイトを見つけてはよく転々と変えている。その考えを否定するわけではない。しかし、コミュニケーション能力、思いやりや配慮、言葉遣いはお金で買うことはできない。

私はアルバイトで得るのはお金だけではないと考える。

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