【 入 選 】

【テーマ:女性として頑張りたい仕事・働き方】
女性管理職の割合と働き方の多様性
大阪府 ダブルムーン 33歳

女性の社会進出が進み、女性も活躍できる「良い時代」になってきているが、「働き方の多様性」というキーワードでみると、果たして本当に「良い時代」なのだろうか。昨年、政府は「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上」との目標を掲げた。これを聞いたとき、私は驚いた。これで政府は本当に働く女性の数が増えると考えているのだろうか。そんなものを求めるから女性は仕事を辞めてしまうのではないか。

私はちょうど今年で入社十年目。若手社員の時代は過ぎ、中堅社員として同期も活躍している。先日、同期女子で集まった折、「最近働き辛くなった」と一人がポツリ。彼女は総務関係の部署で働いており、部署内には女性が多い。バリバリ働いてどんどん出世していく女性社員も多く、「××年までに女性管理職を××人に」を目標に掲げる会社のフラッグ部署といっても過言ではない。彼女も仕事ができるため、周りからも期待されているようだ。では、何故彼女は働き辛いと感じているのか。理由を聞くと、彼女は出世したいとは思っていないことがわかった。彼女は既婚者で、働くことは好きだが、それと同じくらいプライベートも大事にしたいと考えている。しかし「女性もバリバリ働いてどんどん出世しましょう」という雰囲気の部署にいると、周りのプレッシャーがすごいらしい。

私にとって彼女の話はすんなり理解できた。私も似たようなことを思っていたからだ。私は二児の母で、今は二人目の育休中だ。仕事は好きだし、専業主婦より外に出て働く方が性に合っているので、できる限り定年まで働きたいと考えている。しかし「出世したいか」と問われると、「いいえ」だ。出世して責任を負いたくないからではなく、拘束時間の問題である。日本的な会社の場合、出世するに従ってどうしても仕事優先になり、プライベートは侵略されていく傾向がある。私は働くことが好きだが、それを理由に夫や子どもとの時間が取れなくなるのは嫌だし、仕事のせいで気持ちの余裕がなくなり、家族を思いやることができなくなるのが怖い。もちろん賃金対価を得ている以上、仕事を疎かにするつもりはないし、もらっているお給料分はきちんと働く。ルーチンワークだけではなく、新しいことにチャレンジしたい気持ちもある。しかし今のところ「出世」は望んでいない。

女性はライフステージ毎にガラリと考え方が変わる。仕事に対しても、結婚や出産を機に考え方は変わっていく。例えば、独身時代は仕事に熱中していた人が、出産を機に子育てに重きを置きたいと考える。もちろん子育て中も以前と変わらず第一線でバリバリ働きたい人もいるだろうし、子育てがひと段落したら、また仕事に集中したいという人もいる。まさに十人十色だ。しかし「女性管理職の割合」を重視するこの変なご時世では、会社もバリバリ働いて出世することを女性に求める。従って、先述の同期や私のように緩急つけて働きたいと考える者にとっては、非常に働きにくい環境となってきているように感じるのだ。女性の活躍を推進するために女性管理職の割合を求めるということは、言い換えると、バリバリ働く女性しか認めないということではないだろうか。

女性管理職の割合を求めるのではなく、性別にかかわらず、能力のある人は管理職に登用する。それならいい。しかし政府が掲げたおかしな目標は、真意はともかく、結果として各企業がバリバリ働く女性を求めるという状況をもたらしている。

ライフステージに合わせて働き方を変えられる社会。それが真の意味で実現すれば、結婚や出産を機に退職する女性の数は減り、おのずから働く女性の数は増加するのではないか。働き方の多様性を認めることが、政府の成長戦略の一つである「女性の活用」につながると信じている。

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