【 努力賞 】
【テーマ:仕事・職場・転職から学んだこと】
農家は大変だ
徳島県 後藤賀子 80歳

台風11号が徳島県を直撃し過ぎ去った朝のこと。畑に出て見ると、キュウリ、ナス、ゴーヤの支柱は畑に横倒しになっていた。「どうすればいいの。せっかく実がなったのに」収穫を目前に楽しみにしていた野菜類は全滅の被害を受けた。

野菜類を助けようと畑に入れば、長靴はごぼごぼと土にくい込む。今日は作業するのは駄目だとあきらめた。

翌日夫に手伝ってもらって野菜の支柱起こしの作業に取りかかる。所々に太い棒を打ち込んでいた支柱をまず起こした。それに結びつけていた横棒をゆっくりと起こして結び直して行く。この作業をくり返した。

しっかり実のなったトマトは私の手では重くて起こせない。夫に手伝ってもらってやっと作業は終わる。

起こしたトマトは葉っぱは泥だらけ、赤い実をつけていた可愛いいトマトも洗ってあけないと台無しである。熟したトマトをもいでみると、割れ目が入ってもう、いたみかけている。実を摘みとって食べられそうなのだけ残し、後は肥料に積んだ。

こんな作業は次々にやっていると夢中だが、作業を終わってほっとした時にどっと疲れが出る。「もう年だな。無理がきかないな」と実感する。

無理だと分かっていても、頼る人のいない農家は老いた力を最大限に生かして農業に挑戦している。

翌日に所用で農協へ出かけて行った。そこで出会った人はみんなお互いに「傷みはありませんか」と声を掛け合っていた。
「家のハウスのビニールが破れて困っている」とか、「納屋の屋根瓦がはがれた」等と台風の被害に付いて話していた。

そこへ組合長さんが出て来て「共済かけていませんか」とたずねた。「そうだ、共済と言う組織があったのだ」と気付いたのである。

こんな台風のような自然災害には私たち農家はボロボロにされても、そこから立ち上がらなければ明日の光は見えてこない。

お互いに年寄り同士であっても手を貸し合って被害を最小限にくい止めなければと思った。さっそく体操の仲間に声を掛けてみよう(体操の仲間は10数人いる)。この人たちに助けの手を求めて災害から立ち上がろう。仲間の中には60代の人もいる。

まだ作業が終わってない家は手を貸してもらえることを提案した。

お互いに手を貸し合って野菜畑の支柱立てや崩れた野菜等の片付けなどに励んだ。そのかいあって体操の仲間も全員揃うようになった。

最近家の廻りに放棄地が目立つようになった。わが家もいずれ農家を出来なくなる。こんな状況を少しでも改善するにはどうすればよいのか重い課題を背負っている。

若者が農家の後継者として農業を引き受けてくれる地域づくりを提案せねばと考慮中である。

戻る