【 努力賞 】
【テーマ:仕事・職場・転職から学んだこと】
ブレイク・スルーは突然に
北海道 鳥本里織 37歳

先日、社長から注意を受けた際に言われた言葉がある。

「自分の価値観で仕事をするな。」

この一言は、私の心に波紋を広げた。帰宅してからもずっと気になってしまい、手帳に書き留めた。

今まで、当たり前のように「自分の価値観」で仕事をしてきた。仕事の処理の仕方を先輩から教わっても、それは私の価値観という土台の上に乗っかるもの。家で子供を叱る時も、そう、すべて。37歳の今、大人になった自分の価値観は正しいと信じていて、疑うこともなかったのだ。

20代の頃、社会に出て最初の職場では、いかにして大勢いる同期の中で目立ち、抜きんでるかということばかりを考えていた。上司の目に留まれば、希望の部署へ行ける。基本姿勢は「私にやらせて下さい!」と手を挙げることだった。しかしそのうちに行き詰まり、結婚を機に退職してしまった。

そうして、再び社会で働くチャンスを手にし、今この職場に私は居る。しかしどうだろう、情けないことに、37歳の今でも、私は20代の頃から少しも進歩していなかったのだ。いくつになっても、大したことのない自分に気が付いてしまった。

社長の言いたかったことは、「お客様のための仕事をしなさい」ということだったのだと思う。私には、仕事の基本中の基本ともいえるこの視点が、そっくり抜け落ちていた。お客様が望んでいない、喜んでもらえないことをいくらやっても、それは誰のためにもならない。自分がいいと思っているだけの独りよがりだ。これまでの職場における、自分のしてきた数々の失敗や衝突も、なんだかこの理論で説明ができるような気がした。

このことに気付いてから、自分がどうしたいか、という視点ではなく、常に小さなことでも「お客様はどうしてほしいのだろう」と相手の立場で考えるようにした。そうした結果、少しずつ周囲の物事がスムーズに回るようになってきたような気がする。私自身のイライラも減った。

大切なことは、「自分はこれでいいのだ」という独りよがりな自信を持たずに、謙虚に人の言葉に耳を傾ける姿勢であった。また、年齢が上がるにつれて、率直に「こうしたらいいよ」と忠告してくれる人も減るものである。それならば、自分自身を客観視する目を持ち、己の行動を律していくより他は無い。

そういえば、社長はというと、いつも自然体で気ままなように見えるけれど、その社長の価値基準がすなわち会社の規範であり、社風でもある。

お客様に喜んでもらえる仕事をしよう。私も、会社の一員としてこの社風を受け継ぎ、そしてこれからも社長の後について、多くのことを学んでいきたいと思う。

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