【 努力賞 】
【テーマ:非正規雇用者として社会と職場に期待すること】
今の自分と世間について
愛媛県 曽我部雅紀 28歳

私は、請負会社で製造業の仕事をしている。何度も同じ繰り返しの仕事だ。その中で役立つ資格を取得しようと考えたが、職場には資格を取得する補助制度もなく、私と同様に非正規の方が多い。正規になるには会社に対して絶対に服従する気持ちと指定したノルマ以上の実績を達成しないと出来ない職場であり、総合的な実績ではなく、最初から正規に転換するつもりがないと捉えることが容易に想像出来る。

先日、私は突然会社から解雇通知を受けた。内容は「私語が多いのと能力的に向かない」と言われた。能力はともかく「私語が多い」と言うのはどうだろうか?職場内のコミュニケーションは必須でお互いに報告や相談もしなければならない。今まで会社のために尽くして来た人間を使い捨て状態にするのだ。もちろん反発はしたが抵抗の余地もなく強制的に解雇となってしまった。

非正規で勤務していると賃金が低い。非正規は時給制が多く、手取りが社会保険等を引かれて十数万ぐらい。何とか生活は出来るかもしれないが将来性が無い。残業や休日出勤で就労し、手取り額を多く得なければならない状況にある。同じ能力を持っていたとしても雇用形態が違うだけで賃金に大きな差がある。どれだけ努力しても賃金は上がらない。しかも使い捨て状態にされる。

この時、私は一体どんな職業が向いているのか?と考え始めた。製造業が合っていないのか?今の私には「自分探し」と言う名目で旅をする感覚で適職を模索するしかないのだ。もし、適職な仕事が見つかれば職場には安定した雇用と安心して生活出来るような収入確保と職場環境を形成してもらいたい。それが今の私の願いでもある。

だが、それとは裏腹に私が気になっているのは、メディアに度々報道され、世間で問題となっている「ブラック企業」についてだ。昨年、流行語大賞にも選ばれ注目を浴びた。具体的には長時間労働(サービス残業)、パワーハラスメントの定着化、手当が支給されない、正当な理由の無い解雇や異動等の法律違反している会社のことを指す。今思えば解雇させられた職場もブラック企業だったのではないかと薄々感じ始めた。特に長時間労働で身体を壊して自ら退職を余儀なくされたり、過労死や自殺した話を耳にする。人が亡くなるまで働かすことは法律以前の問題だ。

また、多数の面前で容赦ない叱責、人格否定、無意味な暴力や脅迫、業務量の過大な要求、仕事を提供しない、他者との関わりを無くすために隔離状態にする等のパワハラ行為を平気で行う会社はまるで独裁国家のように見える。こうした案件を踏まえて政府も打開策を考え、少しでもブラック企業を減らす努力をする動きが始まっているが、果たしてその光が見えるのは何時になるのだろうか?

人それぞれ生き方や働き方があり、職業選択の自由もある。しかし、「働く」と言うことは社会に貢献することでもあり、人として成長して行くことを表している。また、自分だけではなく相手に対して思いやりを持つ気持ちが育つ職場環境を作り、長期に渡って働ける環境であって欲しいと願う。その意思を平気で壊す会社は「無意味な存在で生命を奪う場所」だと私は考える。

これからの時代に必要なことは政府が国民に対して裕福な生活環境を提供出来るような社会。法律を順守し、快適な環境の下で働き社会に貢献出来るような職場。私はそんな社会と職場に期待したい。

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