【 努力賞 】
【テーマ:世界と日本−海外の仕事から学んだこと】
世界と日本―海外の仕事から学んだこと
千葉県 伊藤友香 21歳

日本人の良いところの中に真面目で勤勉ということがある。もちろんそれに例外はあるが日本人の国民性としてそう考えてよいだろう。しかし、長所と短所は紙一重であり、それは日本人の悪いところでもあるといえる。近年問題となっているのが、残業が多く休暇が取れない所謂ブラック企業の存在だ。このブラック企業というのも日本人の勤勉さ故に生まれたものであろう。

日本と海外の働き方と比べてみると、そこには大きな違いがあることがわかる。国によってそれぞれではあるが日本の働き方との大きな違いとして、長期休暇をきちんととる、残業をしない、プライベートと仕事をしっかり分ける、等が挙げられる。正直、このような働き方は羨ましく思える。

日本人には基本的に真面目に働くという文化が根付いている。敗戦後、数十年に及ぶ努力の結果、世界のなかでも稀に見る経済的繁栄を実現できたのもそのおかげだろう。今、私たちが当たり前だと思っていることも人々の勤勉さの成果である。例えば24時間空いているコンビニエンスストアや時刻表通りに運行している交通機関などをあげることが出来る。日本では当たり前のことになりつつあるがこれは多くの人々によって支えられていることで成り立っていることだ。

あまり細かいことを気にせず、休みをしっかりと取り、時間にあまりとらわれないインドでは公共交通機関の数時間にも及ぶ遅れが日常茶飯事である。しかし、それに関わらず地下鉄だけはたった数分の誤差で唯一動いているという。インドのこの地下鉄というのが日本の政府開発支援によって建設されたもので、日本人技術者も多く関わっていた。インドの技術者は当初、集合時間に遅れたり、納期も気にしようとしていなかったが、日本人技術者が集合時間前に全員きちんとそろっていて、集合時間には既に仕事を始める準備が整っていること、また、納期を守るための姿勢に感銘を受けたという。そのおかげで地下鉄は予定より二ヶ月半も早く完成した。その後も日本人による運行指導によって時間に正確に運行する訓練が行われ、上記の結果をもたらしたそうだ。インドの人々はこの地下鉄をベストアンバサダー(最高の大使)と呼び、資金援助や技術援助はもちろん労働に関する自分たちの価値観が根底から覆された、日本の文化そのものが最大のプレゼントだと語る。

人々の価値観を根底から覆すというのはとても難しいことで、生半可な気の持ちようでは到底できることではないだろう。私は、他の国の働き方はとても羨ましく思うこともあるが、やはり日本の働き方は真面目で素晴らしいと思う。しかし、インドが日本から学んだように、日本も家庭や、プライベートなど、たった一度の人生の自分の時間を大切にするということをもっと学ぶべきだろうとも思う。大切なのは仕事と自分それぞれのバランスを上手くたもつことではないだろうか。

バランスを上手く保とうと思っても、自分ひとりでは難しい。最も理想的なのは社会全体がもう少し余裕を持つことだろう。現代の社会では人身事故などで電車などが遅延しても、会社には遅れてはいけないと焦る人が多いだろう。海外ではストライキなどで電車が止まると諦めて家に帰ってしまうことが多いそうだ。そこまでとはいわないが、もう少し社会全体に余裕がでるとバランスのとれた働き方がしやすくなるのではないだろうか。これからは日本人のまじめで勤勉というようなよいところは伸ばしつつ、日本には無い諸外国の良い文化を取り入れてゆければよいのではないだろうか。

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