【 佳 作 】

【テーマ:女性が輝ける働き方】
仕事も家庭もほどほどに?
北海道 堀尾千佳子 35歳

「いってきます」朝7時。子どもの面倒を見てもらっている姑の玄関のドアを閉めると、それまでの素の自分から、「教師」の自分に気持ちが切り替わる。自転車に乗り、片道30分の小学校へ。「普段やんちゃな〇〇くんは、今日はちゃんと授業に参加してくれるかな」「今日の音楽の授業はどう進めるんだっけ」など不安が頭をよぎるが、「さあ、今日は子どものどんな活躍の姿が見られるかな」と楽しみに思う瞬間でもある。

教師になって10年目。この仕事をしていてよかったと思うことは、受け持ちの子どもたちの輝く瞬間に出会えることである。授業で自分の思いや考えを瞳を輝かせて語る子。学級の子たちの気持ちが一つにまとまり、一緒になって劇を創り上げようとする姿。クラスみんなが歌声を精一杯響かせようと頑張る姿。こちらが用意した授業で、子どもが能動的に表現する姿が見られたとき。やりがいのある仕事で、この先もぜひ続けていきたい。しかし、悩みもある。

一つ目。とにかく仕事でも家庭でも時間が足りない。受け持ちの子どもたちが輝く瞬間を創り上げるには、それなの授業の下準備が必要である。にも関わらず、勤務時間の中でその時間は確保されているとは言いがたい。3時半過ぎに子どもが下校。その後すぐに打ち合わせ。保護者への対応、採点、行事の準備などやることは切りが無い。家にれば、家事、育児。いつも、「今、何を優先すべきか?」「自分の子どものことか?」「授業準備か?」と揺れ動く。家庭を優先すれば、仕事がおろそかになる。仕事を優先すれば、家庭がおろそかになり、一番大切なはずの家族に悲い思いをさせてしまう。どこに重点を置き、何を削るか。いつどんな失敗をし、同僚や家族に迷惑をかけてしまわないか。そんな不安を抱えながら、ここ数年をなんとかしのいできた。

しのいできた、と偉そうなことをいっても、私一人で子どもを抱えながら仕事をしてきたわけではなく、家族、特に姑の強力なサポートがあるからだ。「いってらっしゃい。今日も頑張ってね」と毎朝、子どもの園の送迎を引き受け、私が帰ってくるまで快く面倒を見てくれる。時には、私の仕事の悩みを聴いてくれる。クラスの保護者に納得のいかない要望を頂いたとき、私の味方になって話を聴いてくれる。

二つ目。周囲に子育てしながら働く先輩教員が少ない。

「お先に失礼します」子どものお迎えのために私は職場の誰よりも早く、夕方6時頃に退勤する。同僚の多くが夜9時過ぎまで残っている中でいつも先に帰るのは、周囲に申し訳ない気持ちだ。しかし、子どもと姑が待っているのでそんなことは気にしてはいられない。あまり残業できない分、職場への貢献度はかなり低いだろうが、子どもがもう少し大きくなるまで、と割り切るしかない。このような悩みを分かち合える人がそばにいれば心強いのだろうが、若手が多い今の職場では難しい。

今現在、抱えている二つの悩みを書いたが、教員に関わらず女性が輝きながら働くには、人的な強力なサポートが必要であると思う。長時間労働の働き盛りの夫にその役割を求めても難しい。やはり、自分の子を孫としてかわいがってくれるじじ、ばばだろうか。

今日は、久しぶりの休日。数年前までは、私の仕事の容量の悪さのせいか、休日は平日にできなかった授業準備の時間にとられ、休まる時間は余りなかった。最近、職場にも慣れ、子どもも少しずつ自立し、実家の助けを借りてだが、自分の趣味の時間をもてるようになった。しかし、その間は実家に甘えて自分のことを優先しているからか、なんとなく後ろめたく、罪悪感が拭えない。子どもを持ちながら仕事を続けている先輩の方々、自分も家族もハッピーになれる「こつ」は何ですか?

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