【 佳 作 】

【テーマ:仕事・職場から学んだこと】
「ありがとう」の溢れる職場
日本大学商学部 栗原未佳 19歳

私は去年大学生となり、アルバイトを始めた。職種はファストフード店の接客をしており、これが私の人生にとって初めてのアルバイトであった。極度の人見知りでそしてネガティブ思考になりやすいということもあって、実際にアルバイトをする前は同じアルバイトの先輩たちと仲良くできるか、お客さんと話すことができるのかとても不安だった。やはり予想していた通り最初はなかなか環境になじめず、お客さんとの接客に関しても全く自信が持てなかった。そのような状態が続いた研修期間であったが、ある一人のアルバイトの先輩が私を変えた。その先輩は、5年間働いており、私の研修をほとんど見てくださった。接客面に関しては、接客の心得から実際の接客の仕方まで丁寧に優しく教えてくださった。しかし、ネガティブ思考なだけに自信は持てないままであった。そんな私に対して先輩はいつも「自信もって!ちゃんと接客ができているから思ったとおりにやれば絶対に大丈夫だよ!」と声をかけてくれていた。そのおかげで自信を持って接客ができるようになり、ついにお客さんと接することの楽しさを見出すことができた。

そして他のアルバイトの先輩も本当に優しく、私の代わりにオーダーをしてくれたり、お客さんに提供するものを準備してくれたり、個々の仕事があるのにもかかわらず私が担当しているクローズ作業も手伝ってくれる。そのつど私は、当たり前ではあるが「ありがとう」の気持ちを持って言葉や行動にあらわしている。また、ときには誤った行動をしてアルバイトの先輩やお客さんに迷惑をかけることもある。例えば、お持ち帰り商品のパックを間違えてお客さんに提供されるはずのものが提供されず、あとから電話がくることがある。そのような時、私のアルバイト先では原則としてお客さんの家に商品を届けることとなっている。そして、届ける人はその時間の時間帯責任者である。つまり、仮に私がミスをしたとしてもお客さんに届けに行き、責任を負うのは私ではないのだ。このミスをしたとき私は申し訳ない気持ちでいっぱいである。しかしながら、責任者の先輩は「人間だからこういうミスがあっても仕方ないし気にしなくていいよ!」と優しく言葉をかけてくれる。嫌な顔1つせずこのように優しく接してくれることに、私は言い表せないほどの「ありがとう」の気持ちを持った。

逆に「ありがとう」の気持ちをいただくこともある。それはお店にいらっしゃったお客さんだ。お客さんのトレーをお預かりしたときにもらった「ありがとう」、商品を提供したときにもらった「ありがとう」、ご要望にお応えしたときにもらった「ありがとう」、メニューの説明をしたときにもらった「ありがとう」。これらの行動は働いている人間として当たり前のことをしているだけだ。しかしお客さんは笑顔で「ありがとう」と感謝の気持ちを示してくれる。感謝されると私も自然と笑顔になり、気分も良くなり、この感謝の気持ちこそが働くことへの糧となっているといっても過言ではないだろう。

私はアルバイト先で「ありがとう」の気持ちを表すことの大切さを学んだ。だが、「ありがとう」と感謝の気持ちを表すことは人間として当たり前だと考える人もいるかもしれない。しかし、私は「ありがとう」と言うことが当たり前の行為だとは思ってほしくはないと考える。ただ言っただけの「ありがとう」は必ずと言っていいほど相手に響かない。心の底から感謝している「ありがとう」こそ、相手を笑顔にさせるのだ。

そう考えるようになって以来、お客さんが帰る時の「ありがとうございました」やアルバイトの先輩たちに対する「ありがとうございます」を心の底から大きな声で言うようになった。

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