一般社団法人 日本勤労青少年団体協議会 名誉会長賞

【テーマ:仕事・職場から学んだこと】
人生を支えるということ
大阪府 大阪の介護職員 34歳

現在、私は居宅の介護支援専門員としての仕事に就いています。私が担当する利用者の多くが地方からの出身で、ワンルームのアパートで独り暮らしをされている方ばかりです。

身寄りの無い方が大半で、近所付き合いも希薄です。つまり社会から孤立している状況にあります。

その様な方々が介護を受けるに至った理由としては、アパートの管理人さんや近隣住民の方などからの相談が多く挙げられます。

しかし、当の本人は他人から干渉されたくない為に介護を拒むケースが多いのが現状です。
「介護は必要ないから」と断ろうとされる方もいれば、「何しに来た!」と話を聞くこともなく突然に怒鳴る方もいます。

高齢となり、病気を発症して日常生活を十分に送ることのできない状況にあるにも関わらず支援を断られる方々。専門職として「そうですか、分かりました」と簡単に引き下がる訳にはいきません。

強く拒否をされても幾度となく足を運び、まずは部屋の中に入れてもらい、少しずつコミュニケーションを図りながら信頼関係を築いていくのです。

コミュニケーションを図っていくと、いつしか笑顔を見せてくれる様になり、ご自身のことも少しずつ話し始めてくれます。色々な話を聞くうちに、その方の生活歴や性格が少しずつ見えてきます。そして、そこでいつも気付かされることは、本当は寂しさを感じていて、人との関わりを持ちたかったのだということです。

日本は世界でも有数の長寿国です。高齢化率においては、他に類を見ないほど急速に上昇しました。核家族化等の理由もあり、高齢者世帯や独居高齢者の数も非常に多くなっています。

その様な現在の日本において、私達が考えないといけないことは、如何に生活の質を保って高齢期を過ごせる様に支援していくことだと思います。

利用者の方々と話をしていると、よく耳にする言葉があります。
「生きていても仕方ないから、早くお迎えがきてほしい」

ただ病気を治療する、ただリハビリをするということではなく、その先にある目標を持って頂くことが大切なのです。

目標は簡単なもので良いのです。美味しい物を食べたい、誰かの顔を見たい、どこかへ行きたい…

介護の仕事に就いて、約11年になります。それ以前は全く違う業種で働いており、専門の勉強をしていた訳でもありませんでした。介護とは単に食事や入浴、外出の介助をする程度だと考えていました。しかし、この仕事を継続していると様々なものが見えてきました。自分の仕事への取り組み方や言葉一つでさえも、その方の人生を左右してしまう程に重要な役割を担っているのだと今は感じます。

長生きすることは素晴らしいことですが、この仕事に就いて超高齢社会における多くの社会問題があることを知りました。

これからも日本の高齢化率は上昇していきます。そして、私はこの仕事を続けていきます。

これから何をしなければいけないか。

利用者の方に生きがいや喜びを見出せる支援方法を考えていきたいと思います。そして、生活の質を保って楽しく過ごして頂ければ嬉しい限りです。

その為には常日頃から学習をし、自己研鑽を怠らない様にしていきたいと考えています。
「ありがとう」
「ご苦労さん」
「また来てな」

初対面で拒否をされた方々が、時が経つと自宅を訪れた帰り際にこんな言葉を掛けてくれるのです。

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