【 佳 作 】

【テーマ:仕事・職場から学んだこと】
社会に踏出す若者達に、今私達が出来ること
三条地域若者サポートステーション相談員 関野香織 36歳

三条地域若者サポートステーション(以下サポステ)で働き始めて5年目になる。その間、二百人以上の若者と出会い、その出会いから沢山の事を学ばせてもらった。

サポステの相談で特に多いのは、何に向いているのか、自分がこれから何をすればいいのか分からない等といった漠然とした進路の相談と、人と関わること自体とても不安で、頭では分かっていても中々社会に踏み出す勇気が持てないといった相談である。そういった相談に対し、彼らの置かれている環境や状況を丁寧に確認しながら、本人が達成出来る具体的な目標を立て、実行していく。そしてそれがクリア出来た時には共に喜び、更に励まし合いながら少しづつステップアップしていく。時には失敗することもあるがその小さな歩みは彼らを確実に成長させ、自分らしく生きたいと意欲を持ち、社会に向かって歩み始められるようになる。そんな若者達から私は『プラスの経験を重ねること』がどんな支援にも勝る彼らの原動力になることを学んだ。

サポステに来る多くの若者は自己否定感が強く、マイナスの経験を重ねてきている。何をしても上手くいかない。頑張って、やっとの思いで挑戦したのに期待していた評価が得られなかったり、そんな当たり前の事、出来て当然だろうと逆に突き返されたり…。そんな経験を繰り返す度に、いざ社会に一歩踏み出そうとすると、目前で足踏みしてしまう。こんなことしていられないという思いと、出るに出れない思いとの葛藤。親の目、世間の目に怯えながら過す中でいつしか人と関わらなくて済むような生活を選択している。確かに常識といった枠にはめて本人を見れば、怠けているようにしか映らないかも知れない。「働けって言っても、まるで動こうとしない、全くやる気がない」「甘えているんだ。一日中ゲームばかりして」と愚痴も言いたくなるだろう。がよくよく本人の立場に立ってみると出れるような準備が心身共に整っていないだけのことが分かってくる。例えば過去のいじめが原因で人との関わりに自信を失っていたり、経験しているはずの体験が不登校によって乏しく、何をするにも不安がよぎったり、また体の方は、人目を避けるような昼夜逆転の生活や、不規則な食生活による基礎体力の低下によって通常の生活時間に適応することが難しくなっている事等、そういった社会と繋がっていない期間に生じた諸々の問題を見出し、解決しながらプラスの経験が出来るようにしていく過程がとても重要であり、彼らが『人と接するっていいな』『あったかいな』と心地良く、何だかくすぐったいような経験を重ねてもらうこと。本人が社会に出ても大丈夫だと、自立する希望を持てるような環境作りが大切であり、励まし、良き伴走者になりながら彼らのSOSに五感をフル活用して、真摯に耳を傾けていくことこそ、私達に求められていることではないだろうか。

人間は承認欲求がある。他者に認められたいという思いが原動力となって色々な行動を取る。小さな赤ちゃんでさえ、自分の存在を認めてもらう為に精一杯泣く。それは成長し大人になっても同じ事で、その大事なサインを周囲は見逃してはならないと思う。

限りある私達の人生。そんな有限の命を私は一人一人の若者に精一杯生き抜いて欲しい。生活は豊かになったかも知れないが、人との繋がりが希薄になりつつある現代社会には言葉に言い尽くせない不安が多く渦巻いているように思う。今後その社会を担っていく若者達を思うなら、互いにその存在を認め合い、彼らに生きていく勇気を与える環境と、温かな理解ある社会を築いていくことが私達の役割ではないか。本人の目線に立って見えてくる世界がある。同じ物の見方、感じ方を共有することができればもっともっと社会と繋がりやすくなるだろう。仕事を通じて彼らから学んだ事を胸に、今後も真っ直ぐに、純粋に彼らと向き合っていきたいと思う。

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