【 努 力 賞 】

【テーマ:仕事から学んだこと】
人が人を思う気持ちの大切さ
山形県 サトウアツコ 27歳

近年、高齢化とともに、デイサービスでの訪問カット、寝たきりの方、お身体の不自由な方の仕事依頼を受けつつあります。

初めてのデイサービスの仕事にて、不思議な体験をしました。

26年間、同じ地域に住みながら、一度も会ったことのない祖父との出会いでした。

祖母は、10代で離婚していたので、生まれた時から祖父を知りませんでしたが、名前だけは、存じ上げてました。

祖父だとも知らず、何げない日常の話しをしながら、カットをはじめて中盤にさしかかったころ、見知らぬデイサービスのご利用者である、おばあさんから声をかけられました。
「どこの美容師さんですか?」
「地元の美容師です」
と、私が答えると…おばあさんが 咄嗟に祖父の名前を呼び理解しました。

過去の結び目を解いて、チョウチョ結びするのは、今…この時なんだと悟りました。

誰かが、この世で大切なことは、どんなことがあっても最終的に、ゆるしあうことなんだよ…と言っていたのを思い出し、私は、
「今の世の中、仕事があるだけで、本当にありがたいこと。もしも、お気に召されないようでしたら、無理強いしてまで、カットはしませんので…」
と、伝えると、祖父は
「カットしてもらえて助かる。ありがたい」
と、言ってくれたのでホッとしました。

いつの間にか、カットに集中していたため、おばあさんの姿はなく祖父のカットが終わり、手をつなぎ、みんなが集まる広場へと向かいました。
「今日は、カットさせていただき、また一つ勉強になりました。どうも、ありがとうございました」
と、伝えると、祖父は、
「こちらこそ、どうもありがとう」
と、言ってくれたのです。

過去に、どんなことがあっても、私達は根をまげることなく、いろんな困難を乗り越えてきました。まっすぐ、歩くことしかできなかったけれど…誠意ある行動は、必ず人の心に伝わるんだなあと思いました。

美容師という職を通していなければ出会うこと、話すきっかけもなかったことでしょう。本当の意味で仕事に、今ある環境に感謝することができたような気がします。

あれから、何度か祖父のカットや、ご利用者様のカット、訪問カットをしながら学んだことがあります。

それは、人が人を思う気持ちの大切さです。

お金を得て生活は、成り立つものですが、心で得たものは、使ったからといって、すり減ることのない真心であって、心の財産だと知りました。

働くとは、人が動くだけでなく、心も一緒に動くことなのかもしれません。

美容師である祖母のおかげで、美容師になれたことで、広がった視野にて見えた世界は、私にとって生きる希望をあたえてくれたような気がしてなりません。

初心を忘れず、全てに感謝をこめて、どうもありがとうございました。

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