【 努 力 賞 】

【テーマ:仕事から学んだこと】
「ダメ」を活かして「明日」を探す
岩手県 わすれなぐさ 23歳

何かをする前に、頭の中でシミュレート。不安な要素はないか、危険な要素はないか、くまなく確認する。考えれば考えるほど湧き上がるそれらはいつも、自分の中の「やろう」を押し潰してきた。

初めて社会人になったばかりの頃のこと。失敗して周囲に迷惑をかけたくない一心で、いつものように頭の中でシミュレートしながら仕事を進めるつもりだった。しかし、おかしい。考えようにも、頭が全く働かない。今思い返せばそれもそのはず、初めて社会人となったうえ、それまでの人生の中で全くといっていいほど触れたことのない分野に配属されたので、考える材料が何もなかったのである。今までの思考のくせにそこで気づき、やり方を改めなければならなくなった。

「走りながら考える」という方法にやり方を変えた途端、うまくいかないことが増えた。正確には、思った通りにいかないこと、だ。何をやっても失敗し、そのたび頭を下げる。じっくりと考えてから行動すれば、失敗することも、壁にぶつかることも、少なかった。それができないから、考える間を置かずに足を動かすしかなかった。とにかく、全力で事にあたるしかなかった。

周囲の人の顔色をうかがい、期待に応えるため、私は私に対して失敗することを許してこなかった。「イイ子」でいることが当たり前だった私は、家でひとり、涙を流すことが圧倒的に増えた。「イイ子」の私は、こうやって涙を流すことを恐れていたんだと、気が付いた。でも、不思議だった。うまくいかず、失敗したことは、私に足りない「何か」をいつも運んできた。失敗、つまり「ダメ」が「明日」を見せてくれた。それは、とてもワクワクすることだった。私は私の人生を生きている!と、初めて感じることができた。

仕事を始めるまで、私はいったい、誰の人生を生きていたのだろう。ときどき、そう思うようになった。人に迷惑をかけないように、周囲の期待に応えられるように、といって、自分の中の「やろう」を押し潰し、自分のために頑張ることを今までしてこなかった。「誰かのために」力を尽くすことは確かに素晴らしいことだし、美徳でもあると思う。でも、「自分のために」力を尽くせない人の「誰かのために」という思いには、見返りを求める気持ちが、自然とにじみ出てくるものだと思う。自分のことは自分で大切にしたい。だから、自分の人生も、自分の足でちゃんと歩きたい。そう、思うようになった。

失敗が教えてくれるのは、いつも決まって、それまでの自分が知らなかったこと。自分のわかること、持っているもの、これが人生の幅を決める。あるものの中で満足しようと足元を見つめることを、頑張らない理由にしたくない。頑張らなければ、仕事も、人生も、楽しいものにはならない。自分の人生を自分で生きるきっかけを、私は今の仕事からもらった。

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