【 佳 作 】

【テーマ:仕事から学んだこと】
やりたい事とやるべき事
奈良県 鴫原 慎一 35歳

新卒採用の担当をしている私は、学生にこんなアンケートを取ってみました。「仕事をする上で、自分が目指して来た事と周りから求められる事とどちらが大事だと思いますか?」 学生の答えとしては半々といったところで、それぞれの理由も軸があり真剣に就職活動をしている学生の考えはすごいなと感心させられました。前者を選ぶ学生の理由として多かったのが、「やりたい事なら壁にぶち当たっても乗り越えられると思う」であり、後者を選ぶ学生の理由として多かったのが、「ニーズがあるから仕事として成り立つ」というものでした。私の個人的な意見としては、後者が正解だと思うのです。

よくある就職人気ランキングのトップ100などを見ていると、もしかして“CM多いランキング”と思ってしまう程、露出の多い企業名がずらりと並んでいます。これは明らかに企業の“偶像(アイドル)化”だと思わざるを得ません。目的が入社することになっていて、その後にやってくる日々の業務の裏側に期待と希望を見失ってしまうような気がします。もし人気企業に入ることが学生の言う「やりたい事」であるとすれば、内定獲得=優越感の達成だけに留まり、数年後の転職者の波は治まらないと思うのです。企業選びは看板ではなく、柱を見てもらいたいと思います。柱を見た結果が人気企業であればそれは素晴らしいことだとも思います。つまり、広告と実態は少し違う面があることを肝に銘じて、こんなはずではなかったという気持ちを、柱を確認しないまま抱いて欲しくないのです。膨らみすぎた期待は破裂しやすく、しぼみやすく、それ以上は膨らまないと思うからです。

では、柱って何だろうという声が聞こえてきそうです。条件的には、その企業の事業内容、売上、利益、将来性等とたくさん列挙ができます。もちろん、ここを見て判断することが第一にすべきことだと思います。そして、その次のステップで見なければいけないことが「自分が必要とされているか」ということだと思うのです。必要とする内容としては、人柄、考え方、スキル、資格等さまざまあると思います。それらも含めて会社が必要とするということは、お金を渡してでも働いてもらいたいという会社からの期待なのです。仕事とはお金をもらって初めて成立します。渡すお金の額を決めるのは会社です。お金の額を決める基準はその人のその会社からの必要性なのです。なので、例えば数社から内定を勝ち取ったとすれば、自分の必要性について各社の心意気を問いかけてもらいたいのです。居場所も出世もすべて会社からの期待から始まりその人への必要性で完結します。
必要とされることによって、膨らみかけた自分の期待が少しずつ着実に大きくなっていくことを実感してもらいたいと思うのです。会社からの期待が自分の期待と合致していくように。

つまりは、周りから必要とされる自分になることが最も大事なことなのです。あらゆる勉強をして、起きた物事について常に考え、いろんな人と触れ合っていき、とにかく自分を磨いていく。仕事で言えば会社や依頼主が必要としていることをこなし、応えることこそが、お金をもらうプロと呼ばれる人の仕事なのです。そのことを逆に言うと、お金をもらう以上は必要とされていることをやらなければいけない、やるべきことなのです。そうして稼いだお金で自分自身の人生設計を組み立て、毎日の生活の糧に変え、生きていくのです。

そうやって自分との戦いの連続の中に築き上げられていくものこそが、自分自身という「柱」なのです。私はそんな、柱を必要性に変えられる人が一人でも多く誕生されることを心から期待したいと思っています。

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