【 佳 作 】

【テーマ:非正規雇用者として】
精神障がい者の立場から
茨城県 star 29歳

私には精神障がいがある。これまで健常者として、病気を隠して主に非正規で働いてきた。大学卒業直後は出版社に正社員で就職したが、残業があることや、予測のつかない電話応対が苦手であることなどから、退職した。

現在は、約一年間の就活を経て、障がい者として、自動車部品メーカーでパートという雇用形態で働いている。精神障がい者の就活は厳しかった。景気も悪い中、健常者でさえ就職が決まらない中で、障がい者、特に精神となれば、どこの企業も門前払いのようなものだった。しかし、運よくハローワーク職員に紹介された企業で、非正規だが、働くことができている。非正規だが、というのは語弊があるかもしれない。私は、残業ができない。心身共に7時間程度以上働くと、疲れ切ってしまう為だ。そして、過度に責任の大きい仕事を任されると、自分のキャパを超えていると感じてしまい、マイナス思考に陥り、仕事が続けられなくなる。その為、あえて非正規で働いている。世間では、正社員でないとおかしい、マトモでない、などという目で見られる。美容院に行っても、仕事の話が出るが、そこで非正規だと言うと、ちゃんと働いていない人、というような反応が返ってくる。非正規はそんなに悪いことなのだろうか。ニュースなどでも、“正社員になれない”非正規雇用者などといった扱いがほとんどである。確かに、正規雇用は安定しており、待遇面でも非正規に勝るところがある。何も事情を抱えていない人ならば、正社員になりたいという気持ちがあるのは当然かもしれない。しかしながら、私のように、障がいなどの事情を抱えた非正規雇用の人もたくさんいるだろうと思う。私は運よく障がい者雇用で働けているが、以前の私のように、病気や障がいを隠して非正規で働いている人もいるだろう。非正規雇用でなければならない人に、世間はもっと配慮すべきではなかろうか。様々な人間がいるように、様々な働き方があって良いと思う。

私の職場では、まだ入社して間もないが、障がいについて配慮して頂き、毎日会社に行くことができている。例えば、電話応対については、出なくて済むように、周りの社員が配慮してくれている。ジョブコーチもついており、働きやすいように支援してくれている。職場に期待することは、私が今後も働き続けられるような環境を維持してもらいたい、ということだ。そして、障がいについて知識をつけて頂けたら、もっと有難い、とも思う。たかが私一人の為に、知識を学ぶということは無理難題かもしれない。忙しい社員が障がいについて学ぶというのは難しいことかもしれない。しかし、世の中にはこういう人もいるのだ、ということを知っておくことは、個人の世界を広げることにも繋がり、多様な人間が生きやすくなるのではないかと思う。これは私の働く会社だけでなく、多くの会社で行われて欲しいと願う。精神障がいというと、最近やっと認知されてきている傾向があるように思うが、これまでの日本の歴史ではきちがい扱いされることが多かった。しかし良い薬も出てきており、一見すると障がい者に見えない人もたくさんいる。精神障がい者、というだけでウチは雇いませんよ、という企業の姿勢は改めて欲しい。しかし企業も、精神障がい者をどう扱っていいのか分からない、という意見があるらしい。その為に、精神障がい者は、まず自分の症状を良く知り、上手に伝えることが大切だと思う。自分はどのようなことができ、どのような点に配慮して欲しいのか、そのことを自分なりに上手く纏めておくことが、働くことの第一歩ではないかと思う。企業も、「知る」姿勢をつけて欲しいと思う。

私は、社会に、非正規雇用では肩身が狭いといった風潮を無くして欲しいと願う。多種多様な人間が、共生していく社会が実現できたら素晴らしいと思っている。

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