【 佳 作 】

【テーマ:私の背中を押してくれたあの一言】
目標やきっかけで人は変われる
愛知県 中京大学経営学部 清水 優 18歳

「みんな遊んでるのになんで私だけ働かなくちゃいけないの?」

3年前のある日、私は泣きながらそう呟いた。私立中学に入学したが通信制高校に進学した私。父に「通信なんだから自分の小遣いくらいは自分で稼ぎなさい」と言われ、中学卒業と同時にアルバイトを始めた。私が進学した通信制高校は最低月に一度の通学で問題無かったが、「毎日行きなさい」という両親の方針で3年間毎日学校に通った。通信制高校に通う友人の中で毎日通っているのは私だけだった。

中学卒業と同時に始めたアルバイト。高校生のアルバイトといえばファミリーレストランなどの飲食店かコンビニなどが一般的だが、正直なところ特別やりたいアルバイトではなかった。そんな時にたまたま運良くセットサロンのアルバイトにめぐり遇った。セットサロンとは髪の毛のセット、アレンジの専門店である。美容師とは違い資格なども要らないので高校生の私でも問題無く働けた。「どうせ働くなら好きな事、やりたい事で働きたい」そんな思いから私は髪の毛をセットする事が大好きだったのでセットサロンでのアルバイトを始めた。学校が終わった16時から22時まで週4日働いた。時給は見習いだったので750円。技術を身に付けなければならず、覚える事や練習ばかりでとても大変だったが最初はとても楽しく充実していた。

しかし何ヶ月か経ったある日、知人が来店した際私の気分はとても落ち込んでしまった。彼女は他校の通信制高校に通う同い年なのだが、アルバイトなどは全くしていないらしい。学校も週に1日しか行っておらずほとんどの日を親に貰った小遣いで遊び呆けているそうだ。彼女のような人はそれまでにもたくさん見てきたが、疲れが溜まっていた事もあり家に帰ってから「みんな遊んでるのになんで私だけ働かなくちゃいけないの?」と彼女のように働かずに遊んでいる人たちと自分を比べて自棄になって泣いた。

それから数日後、私は大好きだったセットサロンを辞めてしまった。働く事が嫌になってしまい、貯金を切り崩して遊ぶだらだらとした生活がしばらく続いた。このままじゃ駄目だと頭では分かっていたが、行動に移す勇気はなかなか出せなかった。

その年の年末、私がとても慕っている祖母が何気無い会話で「グランドキャニオンに行ってみたいなぁ…」と口にした。祖母は旅行が大好きで温泉と世界遺産が好きなのだがアメリカのグランドキャニオンには行った事が無いらしい。当時祖母は70歳で足腰も弱くなってきていた。大好きな祖母はいつまでも元気なわけではない。悲しい事だが現実だ。そんな祖母を見てそれまで勇気が出せずだらだらとした生活を送っていた私だったが、「変わろう」と思えた。「大学生になったら私がグランドキャニオンに連れて行ってあげるよ」と私は祖母に約束した。

それから私はインターネットを使い、物を売ったりする仕事を自分で始めた。祖母の何気無い一言は私の背中を押してくれた言葉になったのだ。最初はほとんど成果が出せず四苦八苦する日々だったが成果が出せるようになると収入を得ると同時にグランドキャニオンへの目標に近付く喜びを感じ、気付けば仕事をする事がとても楽しくなっていた。翌年の敬老の日には祖母を温泉に連れて行ってあげた。それまで祖母には連れて行ってもらう立場だったので不思議な感じがしたがとても喜んでくれ、私もとても嬉しく楽しかった。この年から私は毎年祖母を旅行に連れて行ってあげよう、と心に決めた。そして大学生になり、先々月念願のグランドキャニオンに祖母と行く事が出来た。

祖母の為だけに働いているわけではないが、「毎年祖母と旅行に行く」という1つの目標が現在の私の仕事へのやる気の1つに繋がっている。人は大小に関わらず目標やきっかけで変われると思う。来年の旅行の祖母の笑顔を想像しながら今日も私は楽しく働く。

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